第3話 盗賊達に利用されていた頃



 盗賊達に捕まっていた私は、いつもひどい扱いをされていた。


「なんだよ、しけてんな! ぜんぜん宝石が出てねーじゃねぇか!! おらっ、出せよ! 仕事しねーやつには飯やらねーからな!!」


 彼等に囚われた私は、毎日宝石を生み出す事を強要された。


 宝石を出さなければ、ご飯も食べさせてもらえない。


 それどころか殴る・蹴るの暴行を受けてしまう。


 だから、私はいつも怯えながら過ごしていた。


「そんなに宝石は出せないの。お願い! 痛いよ! もう殴らないでっ!」

「嘘つくな! もっと出せるだろ! やれったらやれ! さぼってんじゃねーよ!」


 彼らは事あるごとに私に宝石を出させようとしていたが、そう上手くはいかない。


 私の力には限度があるからだ。


 調子の良い時と悪い時では、宝石を生み出せる回数が違っていたため、出せなくなった時が地獄だった。


 殴られ、蹴られ、髪を掴まれて暴力を振るわれた。


 嫌味や暴言をはかれるときはまだ良い方だった。


 耳をふさいだり、違う事を考えたりして聞かなければいいだけなのだから。


 でも、暴力は辛い。


「ううっ、おとうさまぁ。おかあさまぁ。辛いよ、助けて」

「泣いてんじゃねぇよ。うっとおしいガキだな。宝石を出せるようになるまで、ここに閉じ込めておくからな! てめぇがしっかり働かねーから悪ぃんだぞ!」


 宝石を一つも生み出せくなった時は、狭い牢に閉じ込められて、食事も与えられずに放置されていた。


 そんな死んだほうがましだと思う様な日々が、数か月続いた。






 けれど、そんな日々はあっけなく終わりを迎える。


 盗賊達がとある小国にたどり着いた時、顔も名前も知らない傭兵が私を助け出してくれたからだ。


 その人は、私に「大変だったね」と言って、あたたかい寝床と、美味しいご飯をふるまってくれた。


 泣きだして、自分の名前も家名も言えない私に、辛抱強くつきあってくれた。


 そして、背中をさすったり、面白い話をしてくれた。


 私より五つほど年上だと言う彼は、すごく逞しくて、強くて。


 その時は、まるでお父様みたいだと感じていた。


 そんな人に助けられた私は、これでこの地獄の日々にさよならできると思っていた。


 けれど、待っていたのはもっと辛い日々だけだった。


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