第2話 ルティア・アルゲイル



 私ルティア・アルゲイルは、加護を持っている。


 神様から気に入られたため、宝石を出す力を授かっていた。


 おそらく私を気にいったのは宝石の神様。


 明確な理由は分からない。


 けれど私の容姿は、よく周囲の者達に「まるで宝石のようだ」と言われるからなのかもしれない。


 しかし、加護を持つ事は便利なだけではない。


 一見素敵なもののように見えるその力は、問題を起こす事が多い。


 加護をもらった事で、犯罪に巻き込まれたり問題を起こしてしまう人は多かった。


 特に歴史上で魅了の加護を持った人などは、人を魅了して好き勝手できたものだから、増長して悪女と化してしまった。


 そんな事情があったため、私は宝石の加護を授かっても、黙っていなければならなかった。


 宝石を出す事ができる、なんてお金の事しか考えていない者達にとってはいいカモだからだ。


 それが分からなかった頃の私は、うっかり友達に加護の事を話してしまっていた。


「わぁっ、きれーい。ルティアちゃんは宝石が出せるんだ! ねぇっ、一個ちょうだい!」

「あっ、ずりー。俺にもくれよ!」


 それで、あっという間に話が広がって、犯罪者に情報が渡ってしまったのだ。


 私に目をつけたのは、巷を騒がせる有名な盗賊達だった。


 強大な力を持つその盗賊達は、両親達が依頼してよこした「私を助けるための冒険者や騎士」達を次々と退けてしまった。


 しかも移動の仕方が巧妙であったため、盗賊達がどこに逃げたのか、誰も分からなくなる始末。


 連れ去られていた私にも、詳しい経路が分からないほどだから、よほど手馴れていたのだろう。


 彼等は、人さらいの玄人だったのだ。


 そうやって彼等が私を連れて隣国へ逃げた頃には、誰も助けに来てくれなくなっていた。


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