あと五日

「おはようございます。世界の終わりまであと五日になりました」

 ペン入れを続ける間に、いつの間にか日が昇り、スイッチの入れっぱなしのテレビからいつものキャスターの声がする。

 手近のペットボトルを掴んで水を飲んでいると、メッセージがポップした。

『from: Yuki おっはー、元気? 原稿手伝ってあげようか?(^ω^)』

 昨日と同じ服を着ていたので、慌てて変更してからユキに返事をする。

『To: Yuki おはよう、マジつらくなってきたから手伝ってくれると嬉しい』

 しばらくすると、ユキがやってきた。今日のユキはピンクのツナギに水色の帯のようなものを巻いて、歴史の教科書に出てくるタケノコ族みたいな格好をしていた。

「相変わらず、整理ができてない部屋だねぇ」

 ユキが床に散らばるデータを掬い上げ、ノートの形に整えていく。


 ユキと仲良くなったのも、半年前、課題データの整理を手伝ってくれたのがきっかけだった。

 中級の3Dモデリングの講義で、同期が次々とレンダリングに進んでいく中、データが散らかりすぎていて作業がどん詰まっていた私が絶望していたとき、ユキが現れたのだ。その時のユキの服装は、水色の髪にフリルのエプロンドレス。

 VRでもリアルとほぼ同じ、地味な格好とアバターをしていた私は最初こそ彼女の服装に面食らったが、整理の仕方からモデリングまで、懇切丁寧に教えてくれた彼女に本当にお世話になった。ユキは軽そうな見た目とは裏腹に教え方も上手いし、面倒見がいいのだ。最終的には、その髪色もあってユキが女神のように輝いて見えた。

「ウチ、3Dは結構長いこと勉強してるからわりと上手なんだよ」

 ユキが手を一振りして手元に日本刀のモデルを取り出す。メイド×日本刀。

「わー、すごい! 刃文まで綺麗にできてるね!」

「! キミ、日本刀わかるの?」

 ユキの一重が見開かれたのを覚えている。

「そりゃもちろん、日本刀はオタクの嗜みよ! 好きな漫画に出てくるんだ!」

「さいっこう、キミ名前は?」

 こうしてユキと私は友達になった。

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