第5話 想い
かぐや姫
おや
部屋にいないぞ
どこにいったのか
帝様
話はすでに聞いていらっしゃると思いますが
かぐや姫という美しい女がおります
ああ
その話はよく耳にしておる
私の子供も求愛したそうだが
相手にされなかったようだな
はい
その通りでございます
それでは
私の妃としよう
まさか
私の申し出を断ることはありえないだろう
ごもっともです
すぐに使いを出せ
はい
わかりました
ここは
かぐや姫がいる屋敷だな
はい、その通りでございます
かぐや姫に帝が会いたいとの伝えを届けに来た
私も一度会ってみたい
私はこの国の将軍である田屋敷門三郎という
は
将軍様ですか
そうだ
どうしたものか
かぐや姫がおらぬ
婆さん
どこにいるのだろうか
わかりません
私も屋敷中をさがしているのですが
仕方ないな
将軍様
なんだ
実は今朝からかぐや姫がいなくなりまして
なんだと
すぐに探すのだ
屋敷の中にいるのであろう
帝様もお待ちだ
はい、かしこまりました
婆さん、もう一度よく探そう
屋敷は広いからどこかにいるはずだ
かぐや姫、かぐや姫
どこに行った
いない、いないではないか
将軍様
どこを探しても見当たりません
何
屋敷から逃げたのではないか
そうかもしれません
実は権助という庭職人も行方がわからず
二人は仲が良いと耳にしておりました
もしかしたら、二人で逃げたのかもしれません
わかった
皆の者、この国をくまなく探すのだ
一刻も早くだぞ
権助という男は見つかり次第すぐ
殺すのだ
わかったか
は
将軍様
権助さま
朝が来ました
雪もやんでおります
ここで安らかに住みましょう
こんなところで住めるのでしょうか
かぐや姫さま
大丈夫です
権助さま
三つ数えますので
目を閉じて下さい
わかりました
もういいですよ
なんと
こんな立派な料理が目の前に
私と権助さまはここで幸せに生活できます
大丈夫です
見つかったか
いえ、まだわかりません
なんと
もし、かぐや姫が見つからなかったら
父親と母親である
お前たちの命はないぞ
そんな
助けて下さい
いや、帝様に顔向けできない
かぐや姫
帰って来てくれ
かぐや姫
あれはお父様の声
そうなのですか
せっかく権助さまと幸せに生活できるというのに
お父様
私はどうすれば
かぐや姫
帰ってきてくれ
私はいいが
婆さんも殺されるのだ
どうか
神様、仏様
なんと
お父様
わかりました
仕方ありません
権助さま
申しわけありません
屋敷に帰らないといけません
どうしてでしょうか
私達が屋敷に帰らないと
お父様とお母さまの命がないからです
これはどうしようもありません
私の力をもってしても
ただ、権助さまの命だけは
必ず守ります
心配しないでください
それでは三つ数えます
目を閉じてください
はい
かぐや姫
帰ってきたぞ
婆さん
将軍様
かぐや姫が帰って来ました
なんと
そうであるか
私も一目みたい
ここに連れてまいれ
はい
おお
なんたる美しさだ
帝様の命令さえなければ
私の妻にしたいくらいだ
かぐや姫
帝様がお待ちだ
すぐ、帝様にお会いするのだ
わかったか
はい
そういえば
権助という男はどこにいる
権助は私とは一緒におりませんでした
どこにいるかも知りません
いや
権助を探せ
将軍様
権助という男はどこにもいません
そうか
仕方がない
権助という男はお前とは親しくはないのだな
はい
そのとおりです
わかった
では
すぐ帝様の元へ参る
わかりました
権助さま
大丈夫です
心配しないでください
必ずまた会えます
信じて下さい
なんと
かぐや姫さまの声が聞こえるではないか
かぐや姫さま
どうか
もう一度だけでも
権助さま
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