はじまり

 30年前、宇宙からエイリアンが飛来し、地球に宣戦布告をした。そして、エイリアンを退けることに成功した。だが、残された爪痕を残していった。それがかつての最終決戦の地であるゴミの山だ。

 目的は今でもわからないが、地球以外の星にも知的生命体が存在することが確認され、なんらかの対策をとる必要がある、ということが国連で話された。

 エイリアンが残していったものは爪痕だけではない。国連ではそれを使用し地球を防衛することが決定した。それがエイリアンが戦闘で使用したロボット、もといアーマードワーカー(通称AW)である。

 この話が発表された途端さまざまな企業が開発を始めた。その結果、企業間で起きたのは商戦ではなく、AWを使用した戦争だった。普通に考えて起こるのは商戦だが、エイリアンを退けた直後ということもあり、世界は混乱状態にあった。その中で混乱に乗じ、戦争に前向きな国や武装勢力が攻撃を始めた。それを防衛するためにAWが使用された。

 企業を選ぶ時間はなかった。てきとうにコストが抑えられそうなものを選ぶしかなかった。

 その結果、さまざまな企業がAW業で発展していった。

 そして混乱が収まったあと、必要になったのは遊びから片付けだった。AWが出したゴミはAWで片付けるのが普通だろう、という考えのもと非武装作業用のAWが作られていった。

 


 彼は国に雇われた作業員であった。彼は機械いじりが好きという言葉では表現できないほどの人物だったのでこの依頼を快く受け入れた。AWに乗るのは初めてであった。話を聞いて気分が高揚して最後の方の話を聞いていなかった。とりあえずAWに乗れるということだけが頭に残っていた。

 ところが聞いて極楽、見て地獄。思っていた所ではなかった。

 まず、渡された機体だ。ろくに整備もされず、油さえまともにさされていなかった。

 職場の環境もいいものとは言えない。まず自宅からの出勤の場合交通手当が出ない。社宅でもいいのだが、その場合近所のボロアパートに住むことになる。幸い彼の自宅は職場の近くにあったので問題は起きなかった。昼食は出ず、それどころか福利厚生などない。

 この職場のいいところはゴミ回収を用意してくれているところとゴミの持ち帰りは自由であるということだけだろう。


 持って帰った機体のコックピットに映ったものはAWを戦わせる大会だった。自分の知らないような技術、それを巧みに使う者、そんなことがあると思うととてもわくわくした。

 彼はすぐに機体を用意することにしたが、圧倒的に足りなかった。操縦技術も部品も、あるのは制作技術だけだった。だが大会に参加するには十分な心意気だった。

 大会用に新しく機体を作ることにしたが、作業に使う相棒には負担が大きかった。

 困ったがすぐに気づいた。この機体を使えばいいということがわかるにはそう時間がかからなかった。パーツも困る必要がない。近所にはゴミの山、もといパーツの山がある。

 この事実に気づいた彼は新たなる問題に気づいた。

「どんな機体を作ればいいんだろう」

 彼のAW戦記は始まったばかりである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る