第36話 町に行こう (改稿中)
七月下旬、早朝からリヨンはレジアスとブレイと伐採作業をしていた。
全員が斧とスコップを持って雑木林を進む。
「そろそろ馬が欲しいね、レジアス。根っこを取り除きたいから」
「馬は飼育に手間がかかりますが。シュタルクに行けばあるでしょう」
「アウィスだと力不足だから。大事な仲間に無理をさせたくはないし」
リヨンは細い木に向けて斧を振り下ろす。
一振りごとに斧が食い込み、木片が飛びちぎる。
「ブレイ、できるだけ同じところに当て続けて」
「わかった」
コツを
プレイとレジアスは木をかついで運んでいく。
「運び終わったら戻ってきて」
「わかったよ」
リヨンは
持参した革袋から水を口に入れる。
「今日は暑いなあ」
木の反対側に切り込みを入れ、押し倒す。
二人も戻ってくると伐採作業に戻った。
リヨンはトネリコの木を
今日はトネリコを六本ほど切り倒してから村に戻る。
木を運びながら話が
最初に口を開いたのはリヨンだ。
「ダークエルフさん。村を出て数カ月か」
リヨンが懐かしそうにつぶやくとブレイも反応した。
「三人娘を残して全員が村を出ていったからな。やつらは剣術が強かった」
レジアスはリヨンに新たに得た情報があると前置きして話し始めた。
「オルラン公の領地の大半を国王が召し上げるそうです。代わりに魔王から奪った領地を渡すと」
「
リヨンが驚いても、レジアスは淡々と答える。
「オルラン領は国王の直轄地になりますね」
「得をするのは国王だけだ」(
「ええ。オルラン公に治安悪化の責任を取らせるのでしょう」
リヨンは
魔王が死んで、王国が乱れては意味がないと。
「やれやれ。オルラン公を魔王軍残党にぶつける気か。魔王が死んでも争いは終わらないよ」
「家臣団3000人を連れて。本気で残党と戦う気ですね」
こうして、レジアスと話を続けながら家に着いた。
「少しずつ畑を広げていきたいね」
「そうてすね。村長」
シャーレが唐竿を打って小麦を脱穀している。
朝、リヨンが頼んでおいた作業だ。
「村長さん。終わったよ」
「ありがとう。あと一袋は村で使うから」
☆
朝から港町シュタルクに行くことにした。
アウィスにハーネスをくくりつけ、荷馬車と連結する。
リヨンは荷馬車に小麦二袋と岩塩五袋を載せた。
「馬を買わないとな。セレナ」
「小麦パンは?」
「買うよ」
二人は荷馬車でシュタルクにたどり着いた。
門番に止められ、街に来た理由を問われる。
「シュタルクに来た目的は?」
「塩と麦を少々売りにきました」
「通ってくれ」
門をくぐると、石畳で舗装された大通りに入った。
二人は露天商の市場がある広場に直進する。
市場には白いテントを張った店が左右に並んでいた。
「やあ! 麦を売りたいんだけど」
「へい。麦ですか」
若い店主は袋を開けて、小麦の品質を確認した。
サラサラとした小麦だ。
「これなら2袋でデニエ銀貨5枚かな」
「それじゃあ安すぎる」
リヨンは腕を組みながら考えた。
安く買い叩かられると困る。
「塩も5袋つけて銀貨15枚なら」
「銀貨14枚なら買おう」
「売りましょう」
リヨンは店主と握手を交わし、袋を店に移した。
彼は他に商人の当てがなかった。
今後は村人が野菜を持ち込むことも多くなる。
知り合いの商人を増やさなければならないと。
露天市場を後にしたリヨンはセレナと別行動を取ることになった。
アウィスと荷馬車をセレナに預けて。
「リュート銀貨を10枚渡すから。白パンでも買ってきたら」
「そなたは何を?」
「馬を買ってくるから」
リヨンはたった一人で馬を買いに行く。
馬を売る場所は冒険者時代に見知っている。
郊外の馬小屋に足を向け、そこで一人の男に声をかけた
「農耕用の馬が欲しい」
「馬は高いよ。カネがないやつには売らないよ。即金で払えよ
男は早口でまくし立て、カネがないなら売らないと
「わかってます」
「わかってるならカネを出せ。シャルル金貨を」
リヨンは腰の革袋から金貨を取り出した。
初代皇帝シャルル王の横顔が刻まれた金貨だ。
「農耕馬が欲しい」
「なら金貨3枚でいい」
男は足が短く胴長の大柄な馬を勧めてきた。
彼がいうには、力自慢で荷馬車を運ぶにも向いてると。
リヨンは馬を連れて街を歩いた。
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