第24話 異世界からやって来た騎士
昼、ノワール村に三人組の冒険者がやって来た。人間の男は茶色い革の鎧を着ており、腰に短剣を装備している。彼らは荷車を押しながらゆっくりと村に近づいてきてきた。
彼らが村に入ってきた頃、すでにダークエルフは動きを監視していた。ダークエルフの警備隊長 クルーデリスは茂みに
「止まれ! 怪しいものは連行する」とクルーデリスが叫ぶ。
男は言いながら冒険者手帳を懐から取り出した。
「私たちは怪しくない!その剣を下ろしてくれよ」
シュタルクから派遣されたという三人組の冒険者は村長を出せと言ってきた。
「俺たちはメッセンジャーだ。ローランド辺境伯から手紙を受け取ったんだ。 ダークエルフのエドに伝えてくれ」
「わかった。村長の家に案内する」
「行くわ。今から行く!」と魔法使いが答えた。
リヨンは剣を携えて三人組と面会した。赤髪の長剣使い、センター分けの黒髪に赤バンダナの剣士、茶髪ポニーテールの魔法使いが目の前にいる。
村に来る冒険者は用心せざるを得ない。
それが悪意を持った盗賊組合のものであれば、村に壊滅的な破壊をもたらすからだ。
「手紙を渡しに来たのは君たちか? 」
「冒険者の酒場から依頼を受けました。ノワール村に行って手紙と荷物を渡してこいと」
「荷物とは何だ? 言ってくれ」
「村長。ライ麦、小麦と豆です」
剣士がリヨンに向かって言う。
「噂には聞いたことがあったんすよ。魔王を倒した勇者が村に引きこもっているらしいって。噂は本当すね」
「最初に聞いたときは"マジかよ"と驚いたわ」と魔法使いはおどけて見せた。
「あんたには欲はないのか? 地位、名誉、カネ欲しいと思わないのか。信じられないぜ」と赤バンダナの男が話す。
彼らは別の世界からきたと自己紹介した。別の文明が築かれており、人間が機械と科学技術が発展させた世界から。その世界にはエルフや魔物はおらず、人間が頂点に立っていると。
「本題に入りましょう。手紙にはダークエルフのエドをシュタルクに戻すようにとありました」
「わかった。エドに伝えよう」
シャルル王国では、ほとんど転生者を見ない。なぜなら、王国には別の世界から人間を召喚する力はないからだ。東の勇者は転生者だったと聞いたことがある。それも噂程度に。
リヨンは村人に声をかけ、エドとその仲間を家に呼び出した。外では銀色の鎧を身に付けたダークエルフが整然と一列に並んでいた。
「村長。お呼びですか? 」
「私ではない。シュタルクからの使者がお呼びだ」
「聞きましょう。お前たちは入口で待て」
「仰せの通りに」
魔法使いがエドに手紙を手渡した。エドは手紙を開いて文面を読む。
「エドに告ぐ。新たな敵が迫っている。旧ベルン村を経由してシュタルクに帰還するように」
「エド、文面はほんとうにそれだけか? 」とリヨンは聞いた。
「確かに"帰還せよ"と書かれている。準備して今日中には出発しよう」
席を立ったエドは仲間に声をかけて家を出で行った。おそらく仲間に別れを告げるのであろう。短い再会だった。
「仲間と別れて残念だろう。エド」
「ですが、我々の役割は果たしました。リヨン村長、仲間に話があるので失礼します」
家に残ったのは三人組の冒険者とリヨンだけになった。赤バンダナの剣士が口を開く。
「ところで村長、村に宿屋はないのか? 」
「今は宿屋どころか、酒屋もないよ。ここは田舎だからね。近いうちに酒屋を完成させる予定だが」
「残念だ。明け方に出発したかった」
「夜の道は危険だ。ダークエルフに着いていくといい。護衛ぐらいはしてくれるだろう」
剣士が頭を下げて「感謝するっす。村長」と言う。
「感謝されるほどのことではない。冒険者はその日暮らしだから大変だろう。俺も昔は冒険者だった。旅の苦労はわかる」
エドも横から声をかけていた。
「村長、我々も帰宅する準備します」
「エド、元気でな」
リヨンは狭い村を駆け回って、エドを見つけた。
「エド、 話がある。冒険者を三人連れていってほしい」
「わかった。村長の頼みならどんなことでも受け入れよう」
リヨンはあの冒険者を内心あざ笑っていた。
「彼らが単独でシュタルクにたどり着くのは難しいだろう。彼らは軽装でそれに夜営の準備をしていない。馬も連れていないようだし、あの装備では盗賊に追い付かれて殺されるのがオチだ」
「手厳しいな。確かに、あの冒険者にはうぬぼれがある」
エドとアーテルは短いあいさつを交わす。
異なる立場が二人の親友を引き裂いた。一人はダークエルフの族長で、一人はローランド辺境伯の親衛隊。再び交わることのなかっであろう二人は偶然にも村で再開した。
「アーテル族長、それではお元気で」
「エド 元気でな。また遊びに来いよ」
エドを含む五人のダークエルフは馬に乗って走り去った。
「冒険者はダークエルフに着いていくように。寄り道するなよ」
「シュタルクに向かって進め! さらば同胞よ」
三人の冒険者は五人のダークエルフと町に戻ることになった。
「じゃあな、村長。また来るぜ」と赤バンダナの剣士が手を振った。
「お世話になりました」と魔法使いが頭を下げる。
リヨンは彼らを見送った。元冒険者として不安だったがダークエルフが付いていれば大丈夫だろう。
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