第18話 ゴブリンの巣穴

 翌日、リヨンはゴブリンが住みそうな洞窟の前に来ていた。

 ゴブリンの足跡を探して、ようやく探し出した場所だ。討伐隊にはダークエルフのアーテルとウィレムも一緒にいる。三人で相談した結果、洞窟に入ってみる事にした。

「中にはゴブリンがいるだろう」

「リヨン、ここは暗いな。灯りはあるか? 」

「たいまつに火をつける。ちょっと待ってろ」


 このほら穴は大人ならかがんで入れる大きさしかない。小さいゴブリンなら余裕で動けるだろう。

 リヨンは茶色い革鎧を身につけており、腰には長剣と二本の短剣を備えていた。ダークエルフはミスル銀の鎧を身につけ、短剣を持っている。


 しばらく直線の道を歩くと、トーテムボールがあった。リヨンは特に気にせずに右へ進む。

「リヨンさん……  気になりませんか?」

「アーテル。先に進まないといけない」


 さらに洞窟内を進むと、行き止まりになっていた。大人一人が動き回れるほどの広さがあるのに。

 リヨンは「おかしい」とつぶやく。確かにゴブリンの足跡はあるが、ここで途切れている。

「正しい道を曲がったはず。いったん 戻ってみよう」


 リヨンは元いた道に戻っていった。角から顔を出して周囲を見渡す。すると、後ろにいたはずのダークエルフの姿が見えない。


 リヨンはすぐに引き返そうとしたが。背中に強い衝撃を受けて、そのまま前のめりに倒れてしまった。地面に手をつくと同時に、振り返って短剣を構えた。目の前には緑色のゴブリンが三体も。

「しまった! 」


 その声を聞いて少し驚いたのか、ゴブリンは後退。そして、手に持っていたこん棒を振り上げる。

 リヨンはその矢を切り払い、同時に右足を踏み込んで間合いを詰めると、弓使いに短剣を突き刺した。

「弓使いは厄介だ。先に始末する」


 鞘から引き抜いた短剣をゴブリンに投げつけると、ゴブリンが床に倒れ、洞窟どうくつ内に音がひびきわたった。

「ゴブリンに気づかれたか。まぁいい」


 洞窟内にゴブリンの足音が響く。リヨンは走ってきたゴブリンに向けてこん棒をふりまわした。

 リヨンはさやから剣を引き抜いた。青く光る長剣でゴブリンを狙います。

 右足を出しながら片手を剣で突き出す。洞窟のような塞所戦闘では突き技が有利だ。

「これで5体目っと」


 ゴブリンが放った矢が狭い洞窟内を飛ぶ。飛んできた矢を切り捨てながら、リヨンはゴブリンを目で追いかけました。拾った短剣を投げて始末する。


 洞窟の奥から暗い人影が来た。巨大な緑色の筋骨隆隆とした体が見える。細くてやせっぽちのゴブリンではない。巨大な怪物 オークの登場だ。

「最後に残ったのはオークか? 」


 豚鼻のオークが長い斧を構えた。リヨンは正面からの打ち込みに備えて両腕に力を入れる。

 リヨンは一振りを加えて、オークを引き離しました。オークは振り下ろした斧を剣で受け止められ、焦っている。

「こいつ! 戦いなれてる。さすがボス山のリーダーだ」


 リヨンは"憤怒の構え"からロングソードを降り下ろした。オークの肩を剣がかすめます。彼は左手に握った短剣を胸に突き刺した。

「これでも食らえ! 」


 オークが地面に倒れると、まるで見計らったようにウィレムの声がした。

「すばらしい腕前だ。さすがというべきか」

「ウィレムか? 無事でよかった」

「リヨン、ここの連中は対して手ごたえがなかった。おそらく別動隊だろう」

「そうか。魔王軍からはぐれたのかな」


 アーテルの顔には血が付着していた。

血が戦いの激しさを物がたっている。

「そっちは終わったのか? 」

「ゴブリンシャーマンとゴブリンソードは倒しましたよ」

「アーテル、俺たちはねぐらを襲っただけだった 」

「リヨンさん、とりあえず奥に進みましょう。良いものがありましたよ」


 リヨンはアーテルに言われるまま左の奥に進む。途中、ゴブリンの死体がありましたが誰も気にしない。

 奥にある小部屋にはデニエ銀貨が詰まった袋が何個もあった。

「ゴブリンが村から略奪したのか。今さら持ち主はわからないな」

「これで豚でも買いましょう」

「そうだなウィレム。冬を越せる量の肉が欲しいなぁ」



 二時間後、三人は三匹の豚と二匹のニワトリを連れて帰路に着いた。

「豚も高くなった。一匹でデニエ銀貨十枚、ニワトリは半額以下で済むのにな」

「リヨンさん、卵を食べたいな」

「鶏が逃げ出さないか心配だ。急ごう」


 村に着くとセレナが出迎えてくれた。セレナは金色の髪を触りながら、不安そうな顔で待っていた。

「わっちのためにニワトリを買ってきたのか」

「そうだよ。二匹だけだけどね」

「豚も買ってきたよ」

「何匹? 」

「三匹だけ。今度シュタルクに行った時に買おう」

「ワタシは岩塩で塩漬けの豚肉を作りたいのに」


 リヨンは板で囲った場所に二羽のニワトリを放った。

「それそれ。卵を生んでくれよ」

「そなたよ。ニワトリは何を食べるのか? 」

「雑草とか、残飯かな。ご老人に聞いてみる」


 リヨンが「腹が減った」とこぼしたので、セレナは「夕食にする」と聞き返した。

 二人はフルーメンティを作り始めた。小麦を鍋に入れ、ヤギのミルクを加えて煮てから鍋の中身をかき混る。

「小麦をミルクで煮たボリッジの完成だ」

「うまいね」


 あっという間に鍋は空になった。ごはんを食べたあとは油代がもったいないので。二人で寝室に行って寝た。

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