第56話 過労〈かろう〉
わずか数か月の間に
役員である
その行為がますます
人を見る目があり、私欲を満たそうとしない、更には公平で、勤務態度も真摯に取り組む。
まさに社内に埋もれていた存在であり
それを見出した役員である
上層部は
自分達は外部の人間を取り入れ会社の改善に努力しているといった建前だけの存在だった。
だが上層部は
不景気の中での会社の改善は必要であり、
今まで会社改善が出来なかったのは、何かを変える事により失敗するリスクを恐れていたのだ。
誰もそのリスクを恐れ変えてこれなかった。
だが
リスクマネジメントを想定し変化する事による利益と不利益を想定しプラスになる物は全て改善させる項目としていた。
変える事による利益、不利益、効果、投資額、変えた事による純利益など、事細かく記載された報告書が常に上層部へと報告されていた。
プロジェクト参加の社員達も士気はかなり高かった。
社員を救う事に対する情熱も冷めてはいない。
自分達が会社を変える、この意識はやりがいとなっている。
当然である、今までは考えも及ばなかった事だ。
会社を変えるなんて口にするのもおこがましい。
だがこのプロジェクトはそれを可能にする。
参加者には今まで出来なかった事が可能になった事でさらにやる気を向上していた。
だから人一倍
だが一点、見落としてはならない事を見落としていた。
若い頃は無理がきいたが、現在は昔のようにはいかない。
夢をみていた。
入院している
夢の中の
そして死の直前の
もうすぐ
夢とは解っていた為、必死で目覚めようとしたが目が覚めない・・・。
もう二度と
夢とはいえ、また
ひどい夢だ・・・。
諦めかけていた
夢の中で声が聞こえる・・・。
何だろうか?
自分の体が揺れている?
「・・・じさん・・・おじさん!」
誰の声だ?
目を開けると
その瞳は大量の涙で溢れかえっていた。
「泣かないで・・・君の辛そうな顔は見たくないよ・・・。」
「泣き止んでよ・・・君に涙は似合わないよ・・・。」
少々キザな台詞だったが、
「うん・・・でもこれは嬉し涙だからね・・・。」
そう思うと、嬉しいような、気恥ずかしいような複雑な気分となっていた。
「でも良かった! おじさん二度と目を覚まさないかと思っちゃった!」
(おじさん? おじさんって何だ!?)
しかしそれはある意味仕方がなかった、
「はいはい、騒ぐのはおよしなさい、ここは病院よ?」
「
「まさか、病院でラブシーンを見せつけられるとは思わなかったわ。」
「俺・・・何やらかしたんですか?・・・」
真っ青になった
「貴方は過労で倒れて
「貴方が目を覚ましたら、目を覚ましたことに気付いた
「貴方は
「何て言ってたかしら・・・そう『泣き止んでよ・・・君に涙は似合わないよ・・・。』だったかしら?」
「すみません・・・もういいです・・・聞きたくないです・・・。」
「まあいいわ、倒れるまで仕事をするのはものすごい事だと思うけど、私の考えとしては落第点ね。」
「今、貴方が携わっているプロジェクトは誰のためのプロジェクトなの?」
「社員の為のプロジェクトです。」
「そう、その通りです、そして貴方もその社員の一人です。」
「社員の為のプロジェクトで別の社員が犠牲になった上での結果なんて許されません。」
「この意味解るわよね?」
「目覚めたのだから明日には退院できると思うけど、貴方には一週間の休暇を与えます。」
「一週間ゆっくりしてください。」
「会社に出勤する以外は何をやってもらっても構いません。」
「貴方の言いたい事は解るわ。」
「だけど、この様な判断をした事には意味があります。」
「貴方には解るわね?」
正直、意味など解っていなかった。
だが
「貴方はこのプロジェクトに無くてはならない存在です。」
「貴方が抜ける一週間はとても大変な一週間になると思います。」
「そして貴方も一週間も休むなんて気が気じゃないでしょう。」
「だから貴方にはプレゼントを用意してます。」
「このPCでプロジェクトの進行状態が解ります、使い方が解らないなら
だが
「私の用事は済んだから帰る事にしましょう・・・えっと下野さんは・・・まだ居たそうね・・・。」
「ではごゆっくり・・・。」
「おじさんが倒れたのはわたしのおじさんの体調管理不足もあると思うの!」
「わたし明日もここに来るよ!」
「おじさんが退院しても毎日おじさん家にご飯作りに行くから!」
「嫌とは言わせないからね!」
押し掛け女房となった
その
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