第53話 死化粧〈しにげしょう〉
そしてそこで知り合った、元旦那と結婚し旦那の希望で会社を辞め家庭に入っていた。
元旦那と離婚後は兄である
今思えば
病に体が臥せるまでのほんの僅かな時間であった。
性格は極めて真面目で少々面白さに欠ける点もあった。
良く言えば、真面目で奥手の奥ゆかしさを持つ女性だが悪く言えば、堅物で付き合って面白いタイプの女性ではなかった。
だが、
良く最後の別れである葬儀の人数で、生前の故人の人格が解るなどと言うが、
おとなしく、積極的でない彼女の列席者が多いのは、やはり彼女の内面によるものが大きかったのかもしれない。
意識をしてしてから
元々
無理もない、まだ三歳になったばかりだ・・・。
列席者の多くは
子供の居ない
だが生前の
愛ゆえに
子供には母親が必要である。
特に女児には成長につれ男親では補えない体の変化もある。
そういった事も踏まえ、
葬儀も終了し
市が経営する火葬場である。
皆は炉前に集まっていた。
ホールに運ばれてくる棺がとても小さく見えた。
棺ですら、この大きさである、中に居る
棺の窓が開かれた。
最後の別れの時間である。
棺の中に大量の花々があり
闘病生活で無くしてしまった頭髪をウィッグで補われていた。
瘦せこけてはいたが皮肉な事に死化粧にて整えられた顔色は闘病生活をしていたあの日々より生気に満ち溢れていた。
死後硬直が進み表情にも変化があるだろうと思っていたのだが、
本当にもう話しかけてはくれないのだろうか?
本当にもう起き上がる事は無いのか?
白百合の花だった。
娘である
献花が終わっても
最後の別れを何となく感じているのだろうか?
いよいよ火葬の時である。
別れを惜しむ気持ちはあるがもう後には引けない。
大人しかった
手の掛からない
宥めても宥めても泣き止むことはない。
幼子が実の母を亡くし、これから先母の愛情が無いまま成長していかなければならない。
もう母に甘える事も母に触れられることも無い。
何と不憫な事だろう・・・。
炉に点火され火葬が始まった。
手の掛からない
かえってそれが皆の同情を誘っていた。
約一時間の時が経ち、お骨上げの為に皆は移動した。
部屋の中には灰に囲まれた
小柄な
目の前の母の遺骨が何なのか理解できていないのだろう。
一人一人が
とても軽い。
係員の指示で最後に喉仏の遺骨を喪主である
「最後は妹の婚約者である彼にお願いしたいのですが・・・。」
そして
手がかなり熱かったが直接
「
時は平成一桁最後の年。
イギリス元王太子妃がパパラッチの撮影から逃走する際交通事故死、息子である王子との親子愛に同情を集めた。
またノーベル平和賞などの数々の賞を受賞した、後に聖人認定される修道女がこの年に亡くなり宗教の隔たり無く彼女の死は惜しまれていた。
世界規模での天災災害も多く発生しており異常気象が騒がれ始めた頃の話。
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