第50話 恋敵〈ライバル〉
顔合せの後の交流会が終わり二次会に向かう面々も多かった。
どうせ業務が始まったら
今日は他の社員に譲ってやることにした。
「
今の内に交流するのは確かに必要だろう。
「ああ、別に構わないけど俺は安酒しか飲まないからあまり飲み屋とか知らないんだよね。」
「僕もあまり店は知らないんですが、この近くに一度行った事のあるスナックがあるんです。」
「そこのママが作る煮物が絶品で・・・良かったらそこに行きませんか?」
一次会のあった居酒屋を二人で離れようとすると、
「今日は
別に断らなくてもいいだろ・・・。
女性と飲みに行けばいいのにと
「
「彼女達、残念そうな顔してるけど?」
「いやーっ、僕今好きな人いるんで彼女以外の女性と交流はしないって決めているんですよ。」
随分モテそうな感じなのに貞操観念が強いんだな・・・。
カウンターに二人並んで座っていると店のママから注文を聞かれた。
カウンターの向こうの棚には日本酒が見えたので久しぶりに飲んでみたくなりそれを注文した。
酒と小鉢が運ばれてきた。
小鉢には煮物が入っている。
なるほど、確かに美味い。
「
「でしょ? 僕もこれ食べた時は本当にビックリしましたから。」
美味いつまみがあれば自然と酒が進む。
話しも弾み、二人は打ち解けていった。
(なるほど・・・
話しも盛り上がっていた。
そして楽しくもあった。
だが愛想の良かった
何か話したいことがあるのだろうか?
「
「よく見ていますね・・・さすがです。」
最近このパターンが多いが、かいかぶりすぎである・・・。
どうも良い意味で誤解されている様だ・・・。
「さっき女性社員の誘いを僕は断りましたよね?」
「その時好きな人が居ると言いました。」
「その話で相談があります・・・。」
よりによって男女間の話の様だ・・・。
しかし、よりによって人払いまでして、見るからにモテそうもない
「僕の好きな人は
「何度も彼女を誘いました・・・だけど彼女は全く僕に興味を持ってくれません・・・。」
この男も
「あーっ、
「でも諦めきれず、それからも何度も何度も彼女を誘いました・・・。」
解るぞ・・・その気持ち・・・俺も
「どうしてダメなのか理由を聞いたのですが何も答えてくれません。」
「それでも納得できずに何度も何度も理由を聞きました。」
『貴方の気持ちに応える事は出来ません・・・。』
ものすごい辛い気持になった事を思い出した。
あの後一時的に感情的になったのも思い出していた。
「それでも諦めきれずしつこく誘いをかけていたのです。」
「そして彼女を遂に怒らせてしまった・・・。」
若者よ・・・ものには限度というものがある・・・。
一時撤退も戦略である・・・。
「『わたしはおじさんが好きなの! おじさん以外の人に興味はないの! だからもう二度と顔を見せないで!』って言われました・・・。」
「正直、ビックリしましたね・・・
「でも彼女が貴方を男として見ていたなんて・・・。」
「
「だからなにかも間違いだと思っていたのです・・・。」
「しかし彼女は
この男何を言っている・・・。
勝手に人を持ち上げて一人で納得している・・・。
「だから彼女と一緒になってあげてください!」
「何を言ってやがる!」
思わず
「じゃないと僕はは彼女を諦めきれません・・・。」
こいつ・・・人の話を聞いちゃいない・・・。
「あーっ・・・
「俺と
「つまり清い関係って事ですか?」
少しは理解してくれた様だ・・・。
「一緒になるまで手を出さない・・・何て高潔な人なんだ・・・貴方は・・・。」
ダメだこの男・・・仕事は出来るみたいだが、頭が良すぎるせいか先を読みすぎだ・・・。
「違うって・・・今のところ俺と
「つまり、まだ僕にもチャンスはあるって事ですか!?」
突然元気になりやがった・・・。
「ああっ、今のところはね・・・。」
なんだか、無性に腹が立つ・・・。
これは父親としての感情なんだ・・・。
そうに違いない・・・。
「じゃあ、僕達はライバルって事ですね!」
「負けませんよ!」
「うるさい!おまえはもう喋んな!」
考えもまとめることが出来ない・・・。
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