第49話 闘病〈とうびょう〉
検査、入院を何度か繰り返していた。
そして手術も一度行っていた。
例え五分でも彼女に会えるなら優先して
正直
一番重要で望むべき病気を治療するのは医者の領分だ
頻繁に病院に通っているおかげか、
いつも
そして
毎回何らかの土産を持って行った。
病院でも食事は出る事は解っている。
だが味気ない病院の食事だデザートくらい食べさせてやらないと
いつもの様に
頭にニット帽をかぶっている。
抗がん剤の影響で頭髪が抜け始めていたのだ。
「
毎回最初の言葉はこれで始まる。
「今日はとても気分が良いです。」
「本当手術が成功して良かったよ・・・先生には感謝だな・・・。」
だがこの先何度も手術は行われることも知っていた。
「傷跡は完全に消えないみたい・・・ごめんなさい・・・。」
女の魅力として美しさというものはとても大事な物である。
「なに気にする事はないさ・・・最初は一目惚れだったけど、今は
病気を克服し今後関係が深まったとする。
そして
「体に傷が残って君はショックだろうな・・・だけどその傷は君が助かる為に出来たものだからね、俺は君を失うことに比べれば傷なんて気にしない・・・
「そんな事今更考えてないわ・・・。」
女にとって体に傷が出来る事は死にたい位悲しい事だろう。
女は美しさを求める生き物である。
容姿の美醜に関わらず女は自分を小奇麗にしなければならない。
男の考えではあるが・・・。
人間もまた生物である。
生物であるがゆえ優秀な子孫を残そうとする本能がある。
女は優秀な男を求めて子を産む。
だから自分を美しく見せなければ男から相手はされない。
だから女が美しさを求めるのは本能によって動かされているものなのだ。
中には自己愛が強い者もいるであろう。
結局そういった者も最終的な目的は違えど結局は美しさを求める本能により動かされている。
「髪もすっかり抜け落ちてしまって・・・私すごく醜くなっているね・・・。」
無理もない、女によって髪は命だと言われていた時代もある。
一髪、二姿、三器量か・・・。
「醜いなんて・・・全く何てことを言うんだよ・・・。」
「君は十分今でも綺麗だよ・・・。」
「髪が無くてもそう思えるんだから、完治して髪が生えてきたらもっと綺麗になるよ。」
目は笑っているが照れているのか表情を悟られたくないのであろう・・・。
「うん・・・ありがとう・・・絶対完治させなきゃね・・・。」
「その意気だよ、俺も早く君と一緒になりたい。」
「だから完治させて一緒に幸せになろう。」
「
良いとは言い続けているがやはり気になる様である・・・無理もない・・・。
本音を言うと美しいままの
だが
「俺はたとえ君の顔に大きな傷があったとしても、全身が爛れていたとしても気にしないさ!」
暫くして布団から顔をのぞかせ
「それは私が嫌・・・。」
「うんおいしいよ、とってもね!」
だが
何だか無理をしているように感じられる・・・。
後に知ったのだが抗がん剤の影響で花桜梨の味覚は変化していたみたいだ。
何を食べても、何を飲んでも苦痛にしか感じていなかった。
それでも見せてくれた笑顔・・・。
やはり
その事を思い出すたび悲しくなっていた。
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