第30話 傾倒〈けいとう〉
二十数年ぶりの再会だった。
様々な経験をして生徒に寄り添える教師になる夢。
それとも理想の教師になる夢を諦めたのだろうか?
諦めるはずは絶対にない、
もちろん断る理由などない。
最後に
一度部署に戻り帰り支度をしたら役員ブースの受付まで来るように指示されていた。
「おじさん・・・あの・・・あのね・・・。」
「
「あの
「おじさん、私を安心させる為に嘘ついてない?」
全く持ってその様な事はない、深読みしすぎである・・・。
「おじさん、まだ
「また
「本当に何でもないから、心配しないでね。」
「本当に大丈夫だから、何でもないんだから心配しないで・・・。」
「でも・・・でも・・・。」
「
「噂になっている様な事になってたら、その人と飲みに行くと思うかい?」
ここで納得させねばならない、もう役員ブースは目の前である。
「心配してくれるのは嬉しいんだけど、心配無用だよ。」
「おじさんがこんな嘘つくと思うかい?」
これだけ人から心配してもらえる、確かにありがたい、でも誤解である。
「おじさんがわたしに嘘つくなんて思ってない、でもおじさんは優しいから、わたしを不安にさせない為の嘘かもしれない・・・おじさんはやさしい嘘ならつく気がする・・・。」
大変ありがたい評価ではあるが、誤解であることには違いはない・・・。
「
「あら・・・俺・・・まだ受付してないのですが・・・。」
「受付の子があなたの姿を見かけたから気を利かせて私に連絡してくれたのよ。」
「そしたら
完全な誤解である・・・。
「いやこの子は
「つまりそう言った噂話を聞いて心配になったこの子がついて来たって事ね・・・。」
「全く、社員が多いのも考え物ね、くだらない噂や憶測が飛び交っちゃって・・・。」
全く持って
「まあいいわ、これから
「あなたも用事ないのなら強制はしないけど良かったら一緒に来なさい。」
「ここで出会ったのも何かの縁でしょう。」
「ついてらっしゃい。」
「おじさん・・・あの人が
「かっこいい人だね・・・。」
いつもの
「あなたお名前は?」
「申し遅れました。」
「受付業務を担当しております
「本来であれば
これが
普段の態度を見せつけられている
「別にいいのよ、今は課業時間外だし今から飲みに行くのだから名前くらい知っていないといけないでしょ?」
「それとあなた達のICカードも守衛に連絡してリセットしてもらわないと明日出勤してもゲートくぐれないわよ?」
そうセキュリティー確保の為この会社ではICカードによる運用が行われている。
つまり退社する際にICカードをかざしていないと次に入館しようとしてもエラーが出て社内には入れない仕組みとなっている。
守衛にそれを連絡、つまり
その為もあって
本当にこの
「ねぇねぇ、おじさん・・・
エレベーターから降りるとそこは地下の車両用のロータリーとなっていた。
そこには一台の黒塗りのミニバンが停まっていた。
役員用の送迎車であろう。
ミニバンの横には運転手が待機していた。
「この二人も一緒に乗せて行くわ。」
運転手は頷いていた。
「かしこまりました。」
「今日はこれから食事へ行くつもりだからそちらに行ってもらえますか、いつもの店ね、着いたらそのまま帰社してもらっていいわ。」
「承知いたしました。明日はいつもの時間に自宅にお迎えでよろしいですね?」
「ええ、それでお願いします。」
車両が地上に出ると
抜かりのない対応である。
相当、
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