第31話 転機〈てんき〉
政幸にとって
現に銀座に行く事はほぼ無く、転勤して東京に来た頃に何度か接待で訪れた事があるが個人的に行く用事はなかった。
テーブルの前には大量のナイフ、フォークなどが並べられていた。
所謂フレンチである。
以前、伯母の
取り合えず
次々に運ばれてくる料理。
味など全く分からない。
目の前に骨付き肉ののった皿と水の入った器が運ばれてきた。
フィンガーボールである。
(確か手づかみで食べて良い料理だと聞いていたが・・・。)
やっと緊張せずに食すことが出来る。
だがフィンガーボールの使い方は解らない。
骨付き肉をナイフフォークで食べようとしている。
ナイフフォークの扱いに慣れていない
(
骨付き肉は非常に美味だった。
正直この料理以外の味は緊張で全く覚えていない・・・。
食事を終え酒場へ歩いて向かうことになった。
(やっぱ箸って偉大だな・・・。)
箸には箸で洋食以上の細やかなルールがあるのは知っている。
まあ普段は数あるルールの一部を知っていればいいだけだ。
それにしても手づかみで食事をするのを野蛮だと言い放ちそうなお国柄の料理に手づかみで食べる料理があるとは不可解である。
その点和食は良い。
本来の和食は箸一つで食べることが出来る。
手も汚れない。
何といっても箸を使い慣れている。
そう考えると和食の方が優れているのではないかと思ってしまった。
本来、食事文化なんて比べるべきものでは無い事を重々承知しておきながら・・・。
客商売なら気楽に入れるよう工夫しろなんて思ったりもしたが、それがこの手の店の特徴なのかもしれない。
何にせよ
正直、何を注文していいのかわからない・・・。
しかしメニューすらないこの空間で何を頼めばいいのかが解らない。
「あっ、俺も
正直助かったと思った。
別に知らない事を知らないという事に抵抗はないのだが説明を受けるのも何だかめんどくさい。
「あっ、わたしも同じもので・・・。」
意外な事に
洋酒の銘柄は解らないが、どう見てもブランデーだろう。
あまり酒が強そうに見えない
いつも騒がしい店にしか行ってない
落ち着いて話が出来るし、騒がしくない。
意外な事に
マナーが解らないからなのだろうか?
どうもそうではないらしい・・・。
バーの広いカウンターにうつぶせで寝てしまっている。
あまり酒が強そうなイメージは無かった。
しかもよくよく考えてみれば
そして
もっとも深酒はしていない様であるが。
そこそこ飲める
「
「
「あら、こんなおばさんにこんなかわいらしい子がそう思ってくれているのだとしたら光栄ね。」
「実際、
「でも
『わたしは『
帰郷した時聞いた気がするあの声を
「話を聞いていると
「
「
「そう、この子が下野君の妹さんの娘さんだったのね・・・。」
「話を聞いたところ
以前
「そして
「私は当人同士が納得しているのなら他人の目は気にしなくてよいと思っているわ。」
「でも
「そして
これは本心であり疑いようのない事実である。
だがその愛情の種類が全く解らなくなっているのだ。
「亡くなった人は手強いわね。」
「思い出はどんどん美化されていくものだからね。」
「
「特に
「本当
酔っている為か明確に会話の内容が理解できていなかった。
「
「
何かのきっかけになった様な気がしたのだ。
それが何かは解ってはいない。
だが停滞していた気持ちが前に進んだ様な気がしていた。
「さて人生相談はここまでにして本題に入ろうかしら・・・。」
「
「私は2年後にこの会社を去ります。」
「私は外部の人間と話した様にこの会社に今までと違った視点から改善に取り込むつもりです。」
「もっとも会社の方は私を招いたのは建前だと思っていますが、私は本気で取り込むつもりです。」
「今から話す事はまだ動きもない事なので他言無用でお願いします。」
「今度の役員会でプロジェクトを立ち上げる提案を提出します。」
「必ずこの提案は承認させます。」
「そこで、私の最初の生徒でもある
「私の生徒が才能を発揮できていない現状は私には我慢できません。」
「ただし私はチャンスは与えますが贔屓はしません。」
「
大恩ある
「承知致しました。」
「私は
「
「もっとも
それでも
ある意味贔屓をしないと言っていたがこれは贔屓である。
だが、初めての教え子でもある
ある意味での特別、気恥ずかしいが心地良い。
そして
「一つ質問があります。」
「
「勿論、教育現場に復帰するつもりです。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます