第28話 好転〈こうてん〉
しかし今日だけは断りたい気分だった・・・。
そう
いつも通り断るつもりでいた。
だが今日の
人当たりが良く温和な
結局
ここは男の聖地である。
(
この店が悪いと言っている訳ではない。
この店はこの店なりの魅力がある。
ほぼ男性客なので女性が居たら話せない様な下品な会話も飛び交う事もある。
だから
決して望んでショットバーに連れて行ってやりたいと思った訳ではない。
「おまたせしました!」
「串セットです!」
「お客さん、今日は華やかですね!」
そして
「ひょっとしてお客さんのコレですかい!?」
下品な冗談である・・・。
「違います!」
「そうです!」
当然否定したのが
「いや、うらやましいね~っ、こんな若くで可愛らしいお嬢さんに慕われるって、あやかりたいもんだね~っ!」
きっと全部冗談であると思ってくれているに違いない・・・そうであってほしい・・・。
あまり酒が得意でないらしい、付き合い程度しか飲めない様だ。
だったらこんな店に来て楽しいのか?
「いやいや、今日は実に楽しい、これも
「最近は良い事ばかりあって、私も毎日が楽しいのです。」
それは結構な事である。
「何を関心なさそうにしているのですか?」
「良い事と言うのは
「
ますます何を言っているのか解らない・・・。
「私は以前女性社員が
「だが最近はその様な事を聞かなくなった。」
「むしろ
「
「そしてそれは、
「そこが私はすごく嬉しい。」
確かに最近の
以前この人生の先輩である
以前はそっけなかった返事を、相手の目を見て返事をする。
仕事について聞かれたら、以前ならため息をついて対応していたのだが、今は即対応していた。
正直、何も難しい事ではない。
少し意識して居れば簡単な事だ。
「
確かに最近ベルトの位置が一段階変っている。
「不健康で痩せたのでない健康的に痩せている、何故だか解ります?」
運動量も変わらず、食べる量も変えずに健康的に痩せるなら食事のバランスを見直す事だ。
「どうやら気付いたようですね。」
「今着ているそのスーツ矢野さんに良くお似合いだ。」
「ネクタイも靴も鞄に至るまで。」
「失礼ながら私には
「誰に選んでもらったかは私には大体想像できている。」
相変わらずの慧眼である。
「どうやら私の想像通りの様ですね。」
「
「少し変われば今の様に大きく評価は変わる。」
「私は
「
「だが
「私もそうだが人は誰かに支えられて生きている。」
「それは恥ずかしい事ではない。」
「
それを考えると
だが
近しい知り合いという事で慕ってくれているだけだろう。
自分にはその資格はない。
聞こえて無い訳ではないだろう。
いつもならこの様な話をしていれば必ず何らかの反応をするはずだ。
だが今に至っては
無理やりついてきたから遠慮しているのか?
気まずさを感じるのはなぜ?
解らない事が多すぎる。
― 分からぬは夏の日和と人心 ―
ふとこんなことわざが頭に浮かんだ。
だが思春期の
― 女心と秋の空 ―
同じ意味か・・・。
そうだ
これは親が子を心配する感情なんだと自分に言い聞かせていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます