第25話 変化〈へんか〉
そう
髪型もいつもと違う。
いつもはカット専門店で手早く済ませていたのだが、生まれて初めて美容院を利用した。
だが体型はは変わっていない。
当り前であるが。
今更カッコつけやがってと陰口を叩かれるであろう。
女性社員からはキモチ悪い男がいくら良い着衣をしても無駄だと罵られるであろう。
着衣を変えた事も気付かれないかもしれない。
まあ、いつもの事だ。
別に慣れている。
大事なのは本人の変わろうとする気持ちだ。
業務時間中
どうせロクな事は言われていない。
出勤時間での通勤電車内で想像してた陰口を叩かれている事であろう。
別に今更気にしてはいない。
休憩時間を少し回った頃、
連休中にある約束をさせられていた為である。
今着ている着衣を揃えた日の翌日、
また遊びに行こうとしつこく誘ってくる。
まだ休暇中であったが、交際もしていない男女が頻繁に会う必要も無い。
だが
休暇が明け会社が始まったら弁当を作っていくから一緒に食べてほしいと。
どうせ
それは他人も知っている。
外食するか、社内で食べるかの差である。
社内に居る人間の目は気になるが、
「うあーっ!おじさん良く似合ってる、カッコ良くなったよ!」
下手なお世辞である・・・。
ピアスホールを安定させるためのファーストピアスである。
「
「おじさん、今わたしの事
「いや、今は休憩時間であるし別に当人がそう呼ばれるのを嫌がってないのだから
だが
休憩時間や課業外の時間はそう呼んでやろうと思っていた。
少し気まずいが嫌な気分ではなかった。
「
全くもって恐ろしい。
絶対に穴など空けたくはない・・・。
「おじさん、いいんだよわたし嬉しかったし・・・。」
「わたし初めてだったから痛かったけど、幸せの痛みだった・・・。」
「これが女の喜びなんだって・・・痛かったけど後悔してないよ・・・。」
当然である。
新幹線の中で食べた時より格段に上手くなっている。
「
「すごいな
嘘は言っていない、確かに前より美味い。
「あたし連休中毎日料理してたんだ。」
「がんばったんだよ?」
「でももっと上手になってみせるよ!」
「おかあさんみたいに!」
『がんばった』と言っていた。
真夜中に聞いたあの声の事を思い出していた。
「
「だからおじさん、毎日お弁当食べてもらうからね!」
「毎日?・・・。」
「うん!」
「でも、
「朝、おじさんの机に置いていくよ?」
「帰る時お弁当箱返してくれたらいいから!」
「いや、しかしさすがに毎日は・・・。」
茉莉は両手の指を組み目を潤ましていた。
「え~っ、ダメなの?」
以前なら突き放していただろう。
一緒に居る時間が長くなっている事もあり、情が深まってしまったのかもしれない。
「わかったよ。」
「だけど一つ条件がある。」
「材料費はおじさん持ち、勿論
「これが絶対条件だよ?」
「うん、わかったよ!」
「おじさんね、料理のおいしくなる一番のスパイスは何だか知ってる?」
『愛情』って言いたいのであろう・・・。
当然知っている、だが恥ずかしいので知らないフリをした。
「『愛情』だよ!」
それ来たかと思った・・・。
「だからわたしの料理はどんどんおいしくなっていくと思うよ!」
「だっておじさんの事どんどん好きになっていってるんだもの!」
また
本心から言ってくれているのだろうか?
悪い気はしなかった。
周辺の嫉妬する男達の視線にである・・・。
冷や汗をかく心境であったが、今は取り合えずそれを無視した・・・。
しかしながら、これからは毎日この視線を浴びる事になるだろう。
しかし
これからこの視線を浴び続ける覚悟をしなければならない。
そう考えると憂鬱になってしまった・・・。
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