第23話 買込〈かいこみ〉
上機嫌な
またしても
「それでは
「えーっ、おじさんどっかいこうよーっ!」
時間はまだ午前中である。
正直家に引きこもりたい。
「でも二人共大きな荷物持っているしね。」
「じゃあ、おじさん家に荷物置きに行こうよ?」
また訳の分からない事を言いだした。
「
左程疲れる訳ではないが数時間とはいえ新幹線に乗っていた為、長旅をしてきた後という事で疲労はそれなりにある。
まあ新幹線の旅は快適ではあるのだが・・・。
「だからわたしの荷物もおじさんの家に置くんだよ?」
さらに訳の分からない事を言いだした・・・。
「いや、それはまずいでしょ!?」
「何がまずいの?」
「おじさんの妻として同じ家に住むのがそんなに悪い事なの?」
妻を娶った覚えはないし、二人で住むほど広い部屋ではない・・・。
「じゃあわたしの家におじさんの荷物持ってくればいいんだよ!」
まるで生産性が無い事を言っている・・・。
「なら妥協してコインロッカーに荷物預けたら良いんじゃない?」
妥協というかそれがベストだと思うのだが・・・。
まあ明日も休みだ。
気は乗らないが付きやってやるとするか・・・。
「
「おじさんとなら、どこでもいいよ。」
また一番困る回答である。
「あーっそうだ! あたし舞浜行きたい!」
「却下!」
世界的に有名なテーマパークの事だろう、あんな場所連休中に行くなんて正気ではない。
「あそこは『東京』って頭に名前付いてるけど、千葉県にあるからね。」
遠いから諦めようアピールである。
だが実際はそれほど時間は架からない。
ここから乗り継ぎなしに到着できる。
だがあの路線のホームに行くのがめんどくさい。
同じ駅内なのに一駅分は歩く必要がある。
「じゃあいつもの様にブラブラするだけであたしは良いよ?」
本当安上がりな女である・・・。
ウィンドーショッピングばかりだが結構楽しい。
眼鏡ショップに立ち入った時の事である。
茉莉は顔が小さいのでスタイリッシュなサングラスも良く似合っている。
正直あまり目が見えない。
「おじさん、眼鏡変えたら?」
「もっとカッコ良い眼鏡にしたらおじさんもカッコ良くなれると思うよ?」
自分のダサさはよく解っている・・・。
ほっといてほしい・・・。
だが
『それは見た目を変えようとしない事だ』
だが人間は第一印象である見た目のウエイトが大部分なのは否定できない。
人生の先輩である
しかし何が良いのかさっぱり解らない・・・。
「
「でもなに選んでいいかわからないから茉莉ちゃん選んでくれないかな?」
「私が選んでいいの?」
「なんか夫婦の買い物みたいだよ~っ!」
また例のジェスチャーをしている。
もう慣れた・・・。
真剣に選んでくれている。
3つ程候補があった。
「ん~っ、この中でどれが一番いいかな・・・。」
「どれもおじさんに似合っていると思うしな・・・。」
「もういいよ
「えーっ、もったいないよ。」
眼鏡なんてケースに入れておけばいくらあっても邪魔になるものではない。
値段も一昔の事を考えればそれ程高いものではない。
レンズ選択の際にも
「
「全然いいよ。すごく楽しかったし。」
ついでといっては何だが、
「
「もちろんいいよっ!」
スーツ、シャツ、ネクタイ、ベルト、鞄、靴、ネクタイピンなどの小物。
両手に大きな紙袋をさげていた。
正直歩くのも辛い。
「おじさん、今日はいっぱい買い物しちゃったね。」
「でもそんなに買っちゃって、お金大丈夫?」
地元への帰省代、
結構な額を消費していた。
だが無用の心配である。
住んでいるアパートも都内にしては安アパートであり散財する要素が何一つない。
まるで金の使い道を知らない様な生活を送っていた。
「おじさん、何年も同じもの使ってたからね。」
「そろそろ買い替えようと思っていたんだ。」
嘘である。
こんな機会が無ければ同じものを使い続けていただろう。
「
「わたしに選んでほしいって・・・。」
何だか嫌な雰囲気をかもしだしている・・・。
「もう嫌だ、恥ずかしい!」
そう言いながら
息苦しい・・・。
すごく疲れた。
まるで仲の良い親子の様に。
ならばそれに対して報いるのが人というものである。
「
「何かお礼しないといけないね。」
本当に素直に出て来た感謝の言葉だった。
「お礼か~っ・・・。」
「じゃあ、わたしあの店行きたい!」
茉莉は右腕を水平に上げて指を指していた。
店舗の前にはショーケースがありそこに飾られていたものは・・・。
ウェディングドレスだった・・・。
ウェディングプランナーの店舗の様である・・・。
「却下!」
「え~っ、いいじゃんお店覗くだけだから!」
そんな訳があるはずはない・・・。
うやむやにされて式場の予約までさせられるに違いない・・・。
「ダメ!」
「え~っ!」
生産性の無い会話を繰り返し続けていた・・・。
大荷物を抱えた
駅のコインロッカーには帰省した時の荷物まである。
完全に買い物をする機会ではなかった。
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