第21話 贈物〈プレゼント〉
リビングの天井は煙で充満している。
やる事がないので煙草ばかり吸っている。
実家に居ると言ってもあまり居心地は良くはない。
今だ家庭を持たず、孫の顔すら見せてくれない親不孝者の息子に対して、親の態度はどうも冷たい。
やはり
「わたしもおじさんの実家見てみたい!」
「おじさんのお父さんと、お母さんに挨拶もしたい!」
冗談ではない・・・。
それこそ罠にはまってしまう。
結局
プレゼントを要求されたのだ。
何でそんな事しなきゃならないんだ・・・。
正直そんな物渡す義理はない。
「おじさんの実家に行くのは諦めるから、何でもいいから手元に残る物をプレゼントして!」
なんでもいいというのが一番困る。
自慢ではないがこの歳になるまで家庭を持ったことなどない男にはプレゼント何て無縁だ。
会社での女子社員からの評判も底辺だ、そんな男に縁のないプレゼントを選ぶ事なんて出来る訳がない・・・。
色々考えてはみたが、交換条件の品は皆目見当がつかない。
だから
「んーっと、たとえば指輪とか、他には指輪とか、後指輪とか・・・安くてもいいから指輪とか・・・。」
故郷には
だが皆それぞれ家庭を持っている。
独身で既婚歴のない
だから友人を訪ねる気は最初からなかった。
居心地の良い友人宅は今は亡き親友の
亡くなってしまったとはいえ、故人と会話できるのは気持ちが落ち着く。
まあ今は成長したあの
地方都市とはいえそこそこの規模の街である。
店内で
もちろん指輪以外の・・・。
店内を見て回ってはいるが、指輪以外で何を贈っていいか見当もつかない。
色々悩んでるとき、ふと目に付いたものがあった。
ショーケースに飾ってあった、白い
値段もそこそこする。
だが
見るからにモテなさそうな中年にはこの様な
茉莉への贈り物を購入して特に行く所も思いつかなかった為、そのまま帰ってきてしまったのである。
リボンが付けられた小箱を指でつかみ眺めていた。
こんなにも軽く小さいなものが、結構な値段がする。
無理もないこういった物に全く縁が無かったからだ。
別に金に困っては無いが、交換条件にしては高くついてしまった・・・。
だから連絡せずに向かうことにした。
呼び鈴を押すとトタトタと足音が聞こえた。
どうやら留守ではないらしい。
足音の正体は
「あっ、おじさん! いらっしゃい!」
「
政幸は
「おじさん・・・私嬉しい・・・。」
「おじさんの気持ちは解りました。」
「わたしおじさんのプロポーズ受けます!」
何を言ってやがる、この小娘・・・。
部屋の開いた
「あたしもとうとう、おばあちゃんになるのか・・・時が経つのは早いねぇ・・・。」
「いやいや、指輪ではないから!」
その言葉を聞いた
「何言ってるんです? 冗談に決まってますよ?」
まるで
「おじさん、空けてもいい?」
その問いに答えようとした
ピアスホールがないのである。
まあらしいといえばらしいが・・・。
「
「おじさん、
「うあーっ、これ可愛い!」
「これって何の花!?」
「
「わたしの名前と一緒だね!」
「すごく気に入ったよ!」
「大丈夫だよ、ピアスの穴開けようと思っていたんだけどなかなか機会無くて空けてないだけなんだよね。」
「ピアッサーは実は持っているんだよね、ただ使ってないだけ。」
「いい機会だからこの際開けちゃうよ!」
「
「わたしはこれが気に入ったの、本当だよ?」
プレゼントとしては失敗だったのかもしれない。
だが
「でも、ピアスの穴空けてこのピアス付けられるようになるまで最低一か月は架かるんだよね・・・。」
「おじさん、さっき違うもの買ってあげるって言ってたよね?」
「じゃあ指輪買って!」
想像していた言葉がそのまま来てしまった・・・。
絶対にそれを認める訳には行かない・・・。
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