第18話 帰省〈きせい〉
仏壇の位牌は全部で三つ。
香の香りが鼻につく。
故人にささやきかけているのだ。
生前の故人との懐かしい思い出と共に・・・。
部屋の左手を見ると壁には三つの遺影が飾ってあった。
今ではあまり遺影を飾る家庭はあまりないがここには遺影が飾られていた。
一番右に
真ん中に真司。
そして一番左に
歩道を歩いていた時暴走してきた乗用車が
乗用車の運転手は飲酒運転だったらしい。
苦しまず逝けた事が幸いだったのかもしれない。
だが
どちらの逝き方が
いや不幸が起こった時の選択肢を『幸せ』と表現するのは適切ではない。
この『幸せ』というワードはマシと表現するべきなのかもしれない。
だがあえてその表現を使わせてもらうなら、
丸いお盆を手に持っている女性が部屋に入ってきた。
お盆の上にはお茶と茶菓子。
「センパイお茶でもどうぞ。」
「ありがとう
子宝に恵まれず、実子以上に可愛がっていた茉莉も今はここでは生活していない。
一人で過ごすには少々広い生活空間であろうが、思い出の詰まったこの
元々裕福な家庭で生を受けた
だが頑として実家には帰らなかったのである。
蛍子は昔からそんなとこがあった。
変ったものと言えば人生を重ねたことで様々な経験をしたゆえの成長と小綺麗にはしいるが年齢を重ねた結果少々老けた事、トレードマークだったポニーテール束ねても馬の尻尾をを思い起こさせる程長かった髪を
「そうそう、
親心というものであろう。
「うまくやってるんじゃないかな?」
「入社した時、社内の男達が騒いでいたよ、まああの容姿だからね・・・。」
視線の先は
親友でもあり茉莉の母であった
「センパイ成長した
「
「あたしですら錯覚するくらいにね・・・。」
そう言って
中学生になった
そんな姿の
「社内の男達が騒いでるって言ってましたけどそんなにあの娘って人気あるのです?」
「大人気じゃないかな? 社内の男共をフリまくってるって噂があるくらいだし。」
「そうですか・・・。」
「でも、センパイがいるから少しは安心ですよね?」
「
相変わらずのジェスチャーである。
「でも俺は
「またまたぁー、
しかし真面目な表情をし、座卓の上に両肘を当て掌で頬を包んでいた。
「今でも
本音を悟られ少し気恥ずかしさはあったが
「うん・・・。」
「女々しいと思われそうだけどね・・・。」
「思わない、思わないってーっ、あたしだって似たようなもんだし・・・。」
そう言うと今度は
まるで
「
「センパイも以前
「だから
「でもね・・・。」
「
「センパイが
でた、
「わかった、わかった! ・・・、
「だから
「わかったよ、娘同然として面倒みるよ!」
「よろしい! 鋭意努力したまえ!」
(もっとも
今だからこそ話せる会話もあり、昔話とはいえ
「
「いやいや、センパイ、もっとゆっくりしていったら?」
「晩御飯も用意するから食べてから帰ってってよ。」
「いや、しかし近所の目もあるだろうし、見知らぬ男が長居するのはあまり好ましくないと思うけど・・・。」
「いやいや、そんなの気にしなくていいって・・・。」
嫌な予感がする・・・。
すると玄関方向より物音が聞こえた。
「ただいまーっ!」
どこかで聞いたことのある声・・・。
間違いない
どうやら嫌な予感は的中の様である・・・。
そう、まるで
玄関から
「伯母さんただいま!」
「おじさん中にいる? ちゃんと引き留めててくれた!?」
どうやらこの二人はグルだった様である。
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