第6話 往日〈おうじつ〉(6)
当然だ。本来大人しく目立つような行動を避けている
中では
だが時間は刻々と経っていき、すっかり日も落ちアパートの2階の廊下の蛍光灯には虫達が集まっていた。
あまり思考を巡らせたくなかったのである。
仮に
とにかく今は
待たされる時間が長く、思考停止していた事からか
アパートの扉が開き
「まあ、上がってくれ。」
玄関というにはいささか狭い空間ではあったが置かれている靴は秩序良く整理されていた。
目の前には台所が広がり古めかしい造りながらも清掃が行き届き清潔感すら感じられた。
左側にはおそらく風呂とトイレ、正面には
部屋の奥の角に
真司が
「
「兄ちゃんいたら、
部屋から出て行こうとする
少し瞳が潤い何かのきっかけがあれば泣き出してしまいそうな不安を隠しきれない表情をしていた。
事件を起こした犯人と被害者のみが同室にいる状況である。
釈明を行わなければいけないのは当然犯人の立場である
とにかく感情的な話し方になるのだけは避けたかった。
「
お互いの事を何も知らな状態で自己紹介もせず名前を呼ぶのはどうかと躊躇ってはいたが
「昨日の事なんだけど、本当にごめん。」
頭を深く下げ落ち着いた声で会話を続けようとする
「俺が勝手に一人走りしたせいで、校内で変な目で見られただろうね・・・。」
「でも、そんな嫌な思いをさせたくてあんな事をいったのではない事だけは解ってほしい。」
「結果、君を傷つけてしまった事をものすごく後悔している。」
「だけどね・・・、だけど、あの勢い任せで君に言った言葉も全く偽りはない。」
「今も気持ちは全く変わっていない。」
「とにかく今日は君に謝りたい、それだけを考えてここに来た。たとえ君に嫌われ続けられようと・・・。」
何も喋ってくれない可能性もあると覚悟をしていた
「嫌ってなんていませんよ・・・。」
ちいさな声で、しかしはっきりと聞き取れる声だった。
あきらかな泣き顔、うれし涙などではない。
そして泣き顔のまま無理に笑っているのが痛々しかった。
それが無理に笑う作り笑顔だったのだ。
胸が少し痛かった・・・。
「生涯わたしの事を愛し続けてくれるのですよね?」
「そう言ってくれる人の事を嫌う訳ないですよ。」
泣き出したい気持ちの中
「わたしはもう大丈夫です。もう気にしないでください。」
「今朝もクラスで、あの事を噂されていたのですけど、私の友達がものすごい剣幕で噂していた子たちと口論してくれて、その後は誰も噂する子は居なくなったんです。」
「噂していた子達も後でわたしにあやまってくれる子もいて、すごく嬉しかった・・・。」
きっと、
「それって
「
「実は今日の昼時間、俺を訪ねてきて色々話したんだよね。」
「だから、
大変結構、良い奴だ。
だが
自分の存在を
非常に心地よい時間である。
このままこの時間が続けばいいとは思ってはいたが、この貴重な時間を提供してくれた
惜しむ気持ちを抑え
「
「今度からは良く考えてから行動するよ。」
「もう気にしないでくださいって言いましたよ?」
「ああ、そうだったね。」
「じゃあ、言い直すよ。今日はありがとう、とても楽しかった。」
「そちらの方が素敵でわたしは好きです。」
ずっとその笑顔を見続けたいと、心の底から思っていたが、
互いに笑みを浮かべ別れを告げた。
先程の
「終わったか?」
「すまないずいぶん待たせてしまったな。」
「いやいいさ。」
「で守備はどうよ?」
「
その言葉を聞いた
「そうか・・・、良かったな
時は昭和の終盤。
バブル景気の真っ只中、一億総中流と言われ日本中に元気があった時代。
英国皇太子夫妻が来日し皇太子妃の容姿とファッションが注目され、銀幕は
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