第5話 往日〈おうじつ〉(5)
この地域での水源となっている一番大きな一級河川である。
中学生である二人には喫茶店などで時間を潰すなどといった小遣いもなく河原で会話を続けていた。
両親が離婚していること。
その後、祖母の家に暮らし
祖母が亡くなり暮らしていた祖母の家を母の兄弟に取られ住む場所を失った事。
母が女手一つで
母を少しでも助けたいと高校には行かず働こうと決めていたが、せめて高校くらい卒業しろと母に説得され学費の安い近場の県立の高校を目指していること。
家計を少しでも助けたいとアルバイトを探したが、中学生を雇ってくれなくて無力な自分を実感したこと。
でも近所の親父さんが新聞の配達所を経営していた為、新聞配達のアルバイトをさせてくれた為今もそれを続けていること。
新聞配達のアルバイト代を家に入れようとしたが、母に拒否されそれは全て貯金している事。
社会に出たらたくさん稼いで母に楽をしてもらいたと考えていること。
幼い頃とても泣き虫だった事。
父が居ないことで差別されていた事。
母が夜の仕事をしていることでクラスメイトに馬鹿にされていた事。
そのことが原因であろうか友達があまり居ない事。
でも母の事が大好きで、幼い頃から家事を手伝っていた事。
性格はおとなしく、自己主張が苦手な事。
話を聞いている内に
「俺、
「いやなに、普通の家庭で生まれたら、親に甘えるのも当然だよ。俺だって小さい時は母ちゃんに甘えてたしな。」
「でも今のお前は立派だよ。」
「母さんを助けたいって目標があるしさ、俺にはやりたいこともない、勉強も嫌いだからなにもやってねぇ。」
「金さえ払えば私立くらいは入学出来るから、とりあえず高校に行くけどその後の事は何一つ考えてない。」
「
「なら
ニヤけた顔で
まるで
「いや・・・、絶対あきらめたくない・・・。」
「だろ?」
「まあ、俺らまだ中坊だしな、将来設計なんて考えてる奴なんてほとんどいないと思うぜ。」
「まあ何だ、よく解んねぇがおまえなら大丈夫さ。」
日もすっかり傾き、あたりは夕刻、烏の鳴く声、近くに見える駅には列車が到着し下車する学生たちと、乗車する仕事を終えた大人たちの帰宅の人混み。
「さあ、行こうか
「ああ・・・。」
二人の少年は帰宅の途についた。
主要道路から少し離れており割と静かな所ではあったが商業施設等も近くになく車がなければとても不便な場所であった。
「もうすぐ俺ん家着くぞ。」
壁にヒビが入り、二階への朱色に塗られた階段には錆が浮かんでいた。
お世辞でも良い環境とは言えない。
やはり錆の入った集合ポストがやたら目に入り住居数を示していた。各部屋の前には洗濯機が設置されており居住空間の狭さを物語っていた。
「すげぇボロだろ。」
「家族三人ワンルームだぞこれ、
少し気恥ずかしそうに語る
そうこう話していると、人影が階段を下っていた。
「あら、
女性にしては背の高いスラっとした中年女性、派手な化粧と派手な衣装から水商売の女と想像できた。
「母ちゃんだよ、
「あら、お友達?」
「珍しいわね、
「初めまして、
「
挨拶を交わす
「おばちゃん、これから仕事あるから出かけるけどゆっくりしていってね。」
愛想の良い
「そうそう、中に
「大丈夫だよ母ちゃん、さあ、仕事行った行った!」
ちょっとムッとした表情を見せる
しかし表情は一遍として愛想笑いとなり
「じゃあね、
仕事に向かう為主要道路の方向に歩いている
「わりぃな
「別に気にしてないよ、良さそうな母さんじゃないか。」
「まあ、実の母親ながら悪い人間でないのはわかるが、なんせ客商売しているから、愛想だけは良いんだよな。」
「それより
予定になかった
いざその状況を目前にしてみると躊躇していないとは言い難かった。
だがここまで来てしまった以上、覚悟せねばならないし、するべきであった。
「ああっ、
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