第6話 邸宅内



中村はチラっと社長を見てから、先程チェックに行ってくれた組員を見る。

「お前たち、外の連中と無線がつながらない。 ちょっと様子を見て来てくれんか?」

「「はい」」

組員たちは二つ返事で答える。

その背中を見送りながら中村はつぶやく。

「あいつら・・後で説教だな」


「おい、中村・・やっぱ停電か?」

「はい社長・・原因はわかりませんが、停電のようです」

「さよか・・ほんまに・・クーラーまで止まってしまうとは・・後で電力会社の連中に文句言うてやるわ」

社長は不貞腐れるように言うと、ソファに深く座り直す。

中村はお辞儀をし、組員が出ていった入り口を見つめる。


<菊池たち>


木村邸の家の中から組員が4名出てきた。

直後、全員が特殊銃で撃たれる。

プシュ、プシュ・・プシュ、プシュ。

静かに入り口が閉まろうとする。

菊池が玄関に近寄ろうとすると、村上がうなずきながら近づいてくる。

玄関が完全に閉まらないように組員の靴をドアに挟んでいた。

山下も到着。

菊池に手で合図を送る。


村上の方で組員5名を排除。

山下の方でも4名排除。

菊池は3名と今の4名で7名の排除。

合計16名が1分15秒の間に沈黙。

木村邸の組員、残り11名となる。

倒された組員はその場で拘束されている。

口にはマスキングテープを巻かれているようだ。


菊池は村上たちと目を合わせ、うなずくと静かにドアを開ける。

村上と山下は静かに2階へ向かう。

菊池はそのまま1階を移動。

先程モニターで確認した情報では、2階には6名が待機していた。

玄関から入るとすぐに2階へ向かう階段が見える。

人はいなかった。

玄関付近に部屋が一つある。

小さな会議が出来そうな大広間だ。

その部屋に3名の組員がいた。

椅子に座って飲み物を飲んでいるようだ。

玄関の方に背を向けて話していた。

「ほんまに社長は難しいわ」

「あぁ、俺もそう思うが、いろいろと俺らの面倒をよくみてくれてるしな」

「それは俺もわかる。 この間、俺の母親の誕生日に花を送ってくれたぜ」

「「ほんまか?」」

「あ、あぁ、俺も驚いたわ」

「あの社長・・さすがやな」

「あぁ・・それにしても、この停電・・クーラーが効かんのがしんどいな。 今はまだ大丈夫みたいやがな・・」

「それよりも外の様子を見に行った連中は何してんのやろ?」

組員たちがそう言って頭を動かそうとした瞬間、麻痺させられる。

プシュ、プシュ!

ドン!

プシュ!

1人は当て身を入れられた後、パラライズガンで麻痺させられた。

菊池は無言で組員を結束バンドで拘束していく。

そして口にマスキングテープを貼る。


2階から村上と山下がゆっくりと階段を降りて来ていた。

村上が手で3本の指を立てる。

どうやら2階には3名の隊員がいたようだ。

残りの組員5名。

突入して2分が経過しようとしていた。

木村邸の住人たちは菊池たちの侵入には気づいていない。


<中村>


中村は社長の傍を離れることができない。

自分の仕事だ。

社長を直視しないようにして立っている。

先程、停電の様子を見に行った組員たちがまだ帰ってこない。

まぁ2分ほどしか経過していないが、やけに長く感じる。

部屋の入り口をチラッと見ては社長をみる。

その繰り返しだ。

すると、太腿の部分に何か強烈な熱を感じると同時に痺れた。

声すら出ない。

意識はかろうじてあるようだ。

だが、どうすることもできない。

立っていられない。

そのまま力が抜けるように床に倒れた。


社長の顔が見える。

社長の目が大きく見開かれていた。

「な、中村ぁ・・」

その声が聞こえた直後、女の顔が不自然に視界から消える。

そのまま床に倒れていた。

中村の視界に作業服を着た人物が写る。

中村はそのまま手足を縛られる。

口にはマスキングテープを貼られた。

女も同じように拘束されている。


木村邸の住人で、意識があるのは残りは2名となった。

中村と社長だけだ。

キッチンに2人いたが、既に沈黙。

中村の視界に3人の作業服を着た男が写る。

その一人が中村に近づいてくる。

何やら携帯の画面を見せる。

『叫べば殺す』

中村は首を縦に振り、思う。

ここまでその気配すらわからせずに侵入してきた連中だ。

抵抗は無意味だろう。

その後ゆっくりとマスキングテープがはがされた。


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