第5話 突入
菊池は再度ドローンで各部屋をチェックしていく。
これまでの所要時間、10分ほどだろうか。
玄関の天井付近で待機していたが、扉が開く気配はない。
天井にアンカーを打ち込んで、ドローンを係留する。
菊池はゴーグルを外すと、PC画面を見つめる。
作業用コーンの設置を終えた村上と山下が帰って来ていた。
「最終確認をする」
菊池はそう言うと、PC画面で木村邸の間取りと組員の確認作業を行う。
時間は11時5分。
「後5分で突入する。 村上、電源の切断を頼む」
「了解」
「山下は周辺の警戒。 時間と同時に各自突入せよ」
「「了解」」
全員、脚立を持っていく。
村上は木村邸に電源を引き入れている電柱に向かっている。
菊池は反対側。
山下はちょうど各員と三角形ができる塀のところへ移動する。
全員が時計をチェック。
・・5、4、3、2、1、ブツン!
村上が電源を切断。
同時に邸内にスッと降り立った。
菊池も山下も脚立から邸内に降り立つ。
まだ木村邸内の組員は誰も気づいていない。
◇
<木村邸内>
菊池たちは足音を立てずに壁伝いに移動。
防犯カメラを気にすることはない。
!
菊池の前に組員の1人を発見。
その奥、家の傍にも組員がいた。
菊池は視線を移動させ、2名の他に近くに人がいないかを確認。
いない。
菊池の前の組員に一足飛びに近づくと、そのまま特殊銃を発射。
特殊銃パラライズガン:スタンガンよりも強力な電圧を発生させるワイヤー式の銃。
プシュ!
標的に当たると同時に対象は麻痺する。
即座にワイヤーが銃に回収される。
菊池は銃を2つ用意していた。
少しでもタイムラグを防ぐためだ。
最初に撃たれた組員が倒れようとする刹那、家の傍の組員に向かって発砲。
プシュ!
家の傍の組員も声を出す間もなくビクビクッと震えると、ガクンと倒れる。
菊池は近づいて組員たちの手足を結束バンドで縛る。
組員を静かに床に寝かせる。
!
「お、ぃ・・⚡」
菊池が静かに寝かせているところに、家の角から人影が現れた。
菊池に右目の端に映る。
人影は、不審人物を見つけることには成功したが、声を出す時間は確保できなかったようだ。
菊池は即座に反応していた。
プシュ!
意識するよりも先に身体が動いていたかもしれない。
その場で顔を向けると同時に人影に向かって発砲。
ヒット⚡
菊池は足音を立てることなく静かに移動。
組員は糸が切れた人形のように倒れようとする。
菊池が優しく抱えると同時にそのまま静かに家にもたれさせて座らせる。
こちらも手足を結束バンドで拘束する。
菊池は周りを確認。
人影はない。
村上と山下の突入した場所でも組員がいた。
菊池と同じように静かに組員を削って行く。
木村邸の組員の総数、27名。
◇
<木村邸内>
村上が電源を切断。
テレビが消えた。
「ん? おい、テレビが消えたぞ。 停電か?」
社長がつぶやく。
社長の横でいた組員が言葉を飛ばす。
「おい、確認しろ」
「「はい」」
組員たちが散って行く。
「ほんまにこの昼間から停電って・・ありえへんぞ。 工事の話も聞いてへんしな・・」
社長は不機嫌そうだ。
そしてそのまま社長の横にいる女の頭を撫でる。
「さっちゃん、ちょっと部屋が暑くなるかもしれへんが、堪忍してな」
「フフフ・・」
女は微笑むと社長の腕をグッと自分の胸に押し当てる。
社長はその仕草が可愛くて仕方がないといった顔をすると、横の男、中村の方を向く。
「中村ぁ、今日のお昼の天ぷらやがな・・大きいのを揃えたか?」
「はい、それはもちろんです」
「それならええ」
社長はそう言うと、女を引き寄せて飲み物を飲む。
散っていった組員が戻ってきた。
「中村さん、家の中は異常ありません。 ブレーカーも落ちていませんでした」
「こちらは冷蔵庫はダウンしてました。 それに空調も止まっています」
中村と呼ばれる社長の傍にいる人物はうなずく。
「社長、どうやら停電のようです。 外の連中に確認させます」
中村はそう言うとトランシーバーに話しかける。
「中村だ、どうやら停電らしい。 外の様子はどうだ?」
・・・
・・
反応なし。
「おい、聞こえているのか? 停電らしい・・外の様子はどうだ?」
・・・
反応なし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます