片想いの肖像~その5
翌日の朝、美乃は校門前で捕まえた紀里香に事の
やはり山広智也が犯人だったこと。
二度とストーカーしないよう説得したこと。
紀里香は目を丸くして聞いていたが、話終わるとニッコリ笑って去って行った。
これで一件落着。
結局今回はあのフヌケの出番は無かったわね。
なんか隠してるみたいだけど、またあとで問い詰めればいっか。
とにかくこんな事早く終わらせて勉強しないと。
美乃は満足そうに頷きながら校舎に向かった。
「いい加減白状したらどう」
その日の放課後、美乃は帰り支度をする凪に詰め寄った。
「アンタねぇ、秘密にして自分だけ楽しむのって悪趣味よ。あれだけ私を振り回したんだから、ちゃんと説明なさい」
釣り上がった美乃の眉をひとしきり眺めた後、凪はにっこり笑って頷いた。
そして鞄から直定規と消しゴムを取り出すと机に置いた。
定規の丁度中間あたりに消しゴムを置く。
「これが浜野さんたちとします」
凪は消しゴムを指さす。
どうやら直定規の方はB棟校舎のつもりらしい。
「写真が撮られたのはこっち……浜野さんの後ろから」
そう言って定規の右端を指さす。
「でもお二人が校舎の真ん中にいたのなら、こっちからの方が浜野さんの顔はちゃんと撮れます」
そう言って今度は定規の反対側……左端を指した。
「それは正面からまともに撮ったら、誰が撮ったか分かっちゃうじゃない」
美乃は即座に反論する。
「でも……犯人は変装してました」
凪の返答を待つまでもなく、彼女は言った
犯人は帽子とマスクで変装していたのだ。
つまり紀里香が真正面から盗撮魔を見れたとしても、相手の顔を判別することはできない。
「たまたま覗いた時に後ろからだったので、そのまま仕方なくシャッターを切ったのかも」
「でも走れば数秒で反対側に移動できます」
その言葉に美乃は目を丸くした。
「……それって、もしかして……あんたがB棟で突然走ったのはそのため!?」
あれは移動時間を確認するための
全く、こいつときたら……
「じゃあ何、山広君は女性の後ろ姿を撮るのが趣味だとでもいうの」
「それだと鷹崎君まで呼び出した説明がつきません」
凪は目を細めながら静かにかぶりを振った。
美乃は机に両手を置き、凪の目を覗き込んだ。
「あんた……一体何が言いたいの?」
凪はそれを真正面から受け止め、にっこり笑った。
「山広君は……最初から浜野さんを撮るつもりではなかったのです」
浜野さんを撮るつもりじゃ……なかった!?
美乃ははっとした表情で凪の顔を見た。
静かに頷く凪。
「彼が撮りたかったのは……鷹崎君です」
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