片想いの肖像~その3

次に二人がやって来たのは校内のグランドだった。

すでに練習の終わったサッカー部がトンボがけをしている。

見ると背の高いイケメンが汗を拭きながら歩いて来た。

噂の鷹崎祐介だ。


「何、あんた。彼にも話を聞くつもり?」

美乃の言葉に凪はヘラヘラ笑いながら頷く。

祐介が二人のそばを通り過ぎようとしたが、凪がゆらゆらとその前に立つ。

「ヘイ!ユースケ」

おいおい、いきなりタメ口かよ。

てか、ヘイってなんだ、ヘイって!?

「えっと……僕に何か用かな?」

怪訝けげんそうな顔で祐介が立ち止まる。

凪はそのまま美乃の方に振り向くと勢いよく右手を挙げた。

ついつられて美乃も右手を挙げる。

「たぁっち!」

凪はその手にタッチすると、そそくさと彼女の後ろに回り込んだ。


なんじゃ、そりゃ!!


行こうって言ったのはお前だろ。


どうすんだよ、この状況……


美乃はため息をつくと祐介の方に向き直った。

「鷹崎君、浜野さんの事で話があるんだけど」

仕方なく美乃は、今回の件について祐介の考えを聞いてみることにした。

紀里香から依頼を受けたことを説明する。

「そうか、浜野さんがそんなことを……」

「鷹崎君も聞いてたんでしょ?例のストーカーのことは」

「ああ。僕は相手を見てないので彼女の気のせいだと思ってた」

「盗撮の件も?」

「あれは誰かの他愛ない悪戯だと思うけど……まさか彼女がそれほど気にしているとは思わなかった」

祐介の顔に悔恨の色が広がる。


「それで……相手の目星はついたのかい?」

その質問に美乃は一瞬答えをためらった。

山広智也のことは紀里香に口止めされている。

それに確認もまだだ。

「いえ……まだ何も」

美乃は首を振った。

それを聞いて祐介は肩をすくめた。

「こう言っちゃ何だが、僕はやはり彼女の考え過ぎだと思うな。そんな犯罪めいたことする奴がいるとも思えないし」

そう言い残して祐介は去って行った。

その後ろ姿を眺めながら美乃は眉をしかめた。


何だろ、この感じ……


妙な違和感が心に残る。


思案にふけるその様子を見て、凪は嬉しそうに微笑んだ。

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