そんな
小学生の頃俺は、あまりに太らないものだから、腸に寄生虫がいるに違いないと思っていた。いくら食べても太らないのだ。例えば昼にパン一本、夜にパスタサラダ、朝?朝は何食べてたか?わかんねー。そういう日が続いても太らない。のちにこれは単に食べてないだけだと知った。
ところでここに箱がある。縦1メートル横80センチ、高さ50センチ程度の段ボール箱だ。
そういえば俺も小学生の頃、こういう箱に詰めて送られそうになってたらしい。中学生くらいになってから知った。俺を育てていた叔父かなんかが色々めんどくさくなってそうしようとしたらしい。俺を叔父かなんかに預けた父か母かの元に送ろうとしていたらしい。受け取り主の顔色を想像して楽しんでたらしい。もちろん実行はされなかった。俺はここに生きているからだ。
そしてここに箱がある。さっきメートルとかセンチとか得意気に言ったが正直そういう単位には自信がない。小学生の頃、先生から教室への「1cmはどれくらいか、指でやってみてー?」という呼びかけに応じてこのくらーい!と片手を掲げる同級生の中でおどおどしながらキョロキョロしていたのが俺だからだ。目の前にあるこの箱は、有体に言えば子供から小柄な成人女性とかなら入りそうな大きさの箱だ。
何が入っているのだろう。警察に通報するべきだろうか。いや早まるのはまずい、そうするのは箱の中から異臭がしてからだろう。鼻を澄ませていると確かになんか変な匂いがするが、それはその箱からするものなのかこの街全体が帯びているものなのか三日風呂に入っていない俺の着替えてすらない部屋着と汗ばんだ体が原因なのか判別がつかなかった。夏だ。暑すぎる。こんな日に外に出るなんて気が狂っている。俺は気が狂っている。一刻も家に帰ってシャワーを浴びたい。こうでもしないとシャワーすら浴びないのだ。俺は。
しかしこの道端にある異様な段ボールに惹きつけられてどうしようもない。開けてみたらいいんじゃないかと思った。
いや、やめておこう。俺は俺の感覚に自信がない。
だって、もし開けて、箱の中に俺がいたら気が狂うだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます