夜空

 ゴミ屋敷の中で呆然と突っ立っている彼をみて、Aはいきりたった。「おい、お前」

Aはそのまま彼に掴みかかり、その上半身をかき混ぜるように揺らした。

「何をしているんだよ」Aはそうまた叫んで、彼を突き飛ばす。何が起きているかも見えていないような目で、彼はされるがままに倒れ伏した。にちゃ、と何かが潰れる音がした。

「そういう胸糞悪い映画、観たことあるよ」と倒れたままの彼がやっと口を開く。「俺が盗もうとしてる、っていうんでしょ?」続けて、口角を少し上げるだけの笑いをこぼした。「盗んだのはお前の癖に」と最後に付け加えて、肩のそばのアルコールくさい缶を眺めた。

Aは畳かける。「ここは俺の家で、お前はどうしようもない貧乏人で、俺とは腐れ縁だ。そんなお前が知らない間にここにいる。ついにやる気かって思うぜ、そりゃそうなるだろう」

彼は言う。「貧乏人?そりゃ誰のせいだよ。どこのどいつだ、いきなり消えて、家事をしてくれる都合のいい同居人を捨てて、こんなゴミ屋敷に住んでるのは」

Aは押し黙った。彼も押し黙った。やがて彼は眠り、Aはそれを見計らって彼をゴミ袋に詰めた。

翌朝、ゴミ捨て場でゴミは思う。「やっぱり奪われたのは僕じゃないか」

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