夜空
ゴミ屋敷の中で呆然と突っ立っている彼をみて、Aはいきりたった。「おい、お前」
Aはそのまま彼に掴みかかり、その上半身をかき混ぜるように揺らした。
「何をしているんだよ」Aはそうまた叫んで、彼を突き飛ばす。何が起きているかも見えていないような目で、彼はされるがままに倒れ伏した。にちゃ、と何かが潰れる音がした。
「そういう胸糞悪い映画、観たことあるよ」と倒れたままの彼がやっと口を開く。「俺が盗もうとしてる、っていうんでしょ?」続けて、口角を少し上げるだけの笑いをこぼした。「盗んだのはお前の癖に」と最後に付け加えて、肩のそばのアルコールくさい缶を眺めた。
Aは畳かける。「ここは俺の家で、お前はどうしようもない貧乏人で、俺とは腐れ縁だ。そんなお前が知らない間にここにいる。ついにやる気かって思うぜ、そりゃそうなるだろう」
彼は言う。「貧乏人?そりゃ誰のせいだよ。どこのどいつだ、いきなり消えて、家事をしてくれる都合のいい同居人を捨てて、こんなゴミ屋敷に住んでるのは」
Aは押し黙った。彼も押し黙った。やがて彼は眠り、Aはそれを見計らって彼をゴミ袋に詰めた。
翌朝、ゴミ捨て場でゴミは思う。「やっぱり奪われたのは僕じゃないか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます