ゆきにおぼれ

通話中と画面に出たのを見て、安堵と落胆を同時に机に置いた。かたり、と画面は暗転し、静かに平らに大人しくなった。雪だ。外は明るく落ち着いている。きゃははと子供の鳴き声がした。

この数日間ずっと、毎日数度、「いのちの電話」へかけている。「あなたの気持ち、私たちに伝えて」らしい。日に日に気温が下がるこの日々に気が滅入ると相談できる友人もおらず、かけてみている。時間帯が悪いのか、未だ一度も繋がったことがない。こんなとき、もし私が私でなければ見捨てられたとでも思うのか。先ほどの安堵を机から拾い上げる。画面がひとりでに点き、いまの時刻を教えてくれた。用は無い。

通話中、ということはこの電話に誰かがかけている、ということはそれに至る背景があり、その背景はどんなものかわからないが悩ましいのだろう。私はそのように空想し、どうにも落ち着いてしまう。ここ最近はそうして肺を満たす薄灰色の温かい冷たさを汲んでくるためにこの番号にかけているとさえ思う。

いざ、繋がったら、私に話せる気持ちなどあるのか?伝えようという、気持ちなどあるのか?そうして、何になるのか?

外からきゃいきゃいと、どこかへ走り去る生命の塊が聞こえる。積もっているらしい。雪はしんしんと光を受け止め、散らす。私はずいぶん、恵まれている。

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