だからなのか定かでないが私は金平糖をひどく嫌悪している。

あの角ばったフォルムにどこか丸みを帯びた雰囲気は矛盾も矛盾自己矛盾どっちつかずの愚か者。それを口に放り込んで威張っているのは糖分に操られし糖分の僕でありここできりっと言っておこう、くぐつ・傀儡だ。ぐつぐつ煮込んだシチューが漂わせる香りには甘ったるさなんてとんでもない、ミルクとジャガイモそして私の一存で入れたチーズとその他ブロッコリーやにんじんや鶏肉エトセトラの火にかけられた苦悩。これが金平糖との違いだ。金平糖がどうできあがるのかは知らないがあれって砂糖の塊だろ、どうせ一つかみの砂糖を手に乗せて頑張ってギュッてしたくらいに違いない。シチューとは訳が違うのさ。歴史歴史そう歴史の重みだよ、完成に至るまでの道のりがどうかってこっちのぐつぐつとそのギュっがどれだけの差異を生むか?この通り。

口に運ぶと甘い甘すぎる。金平糖は甘すぎる。砂糖の塊だから妥当だろう。漂うシチューはどう?いい香りだ!うんざりしない。うんざり、味にうんざりしてたまるか。ここにはシチューがある。そして金平糖がある。この私の家にリビングに金平糖があるのは妻が買ってきたからに他ならない。妻は金平糖を好いているらしい。その好きっぷりと言ったら嫉妬に値するほどで常に金平糖金平糖デパ地下で金平糖を買ってきてくれと頼まれ、スーパーのじゃダメなのか聞くとスーパーにある金平糖は粒が大きすぎて食べにくいと言う。確かに可憐な妻の小さく麗しい唇に収めるにはあのスーパーの金平糖はじめとしてお菓子売り場に並ぶものモノたちは無骨すぎる。であるからして仕方なく私は仕事帰りに子供を迎えに保育園に行きその帰りにデパ地下に寄りついでに子供の欲しいものもちょっっと買ってやったりやらなかったりする日があるんだ。そんな日帰った時の妻の目の輝きと言ったら思わず目と口を覆うほどで、私が単体で帰った日にはどうやってもこうはならん。

そして妻は金平糖を私にくれるのだが私は断る。そういうことにしておる。

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