しゅうえん
勢いづけが要るのだ。慣性の法則というのかもしれん。最初に押す力でどこまでも進んでいけるのが宇宙空間で、しかし地球上では色々事情があってそうもいかんのだ。つまりだんだん進む力は弱くなっていく。減速してく。だから最初に押す力とは別に最後に押す力も要るのだ。
俺にとってのそれは「ま、どうせ死ぬしな」だ。すなわち今は絶望だ。人類には終わりが無くなった。
人口と地球は膨らみ続ける。栄光よ!それを手に入れた人類よ!素晴らしいじゃないか?俺はため息をつく。さっき地球は膨らみ続けるって言ったけどこれは比喩じゃなくて、あぁ恍惚としてしまうね、科学の力には。事実今の地球は風船のように内側から膨らむ術を手に入れた。だから人口に合わせて、いや或いは人口が地球に合わせて肥大化し続けるのかな?
でもさ、話は戻るけど、勢いづけだ。その内側から膨らます力にもどっからどう勢いづけてるっていうんだろうな?俺は科学に詳しくない。科学以外にも詳しくない。なんにもない、なんにも無いのだ俺には、風船と地球と人口のように空っぽなのだ。人口って人に口と書くが、よく言ったもんだ、口から先空虚そして肛門まで繋がった人間は空の詰まったすっからかんの肉なのだよね。そいつらが増えて何が楽しいんだ?消えなくなって何が楽しいんだ?
うん、寿命は無限になった。理論上ではなくマジで無限になった。なんでか?科学がすごいから。
寿命は無限になった。俺は木偶の某になった。「ま、どうせ死ぬしな」が無くなった、俺は木偶になった。最後の勢いづけが手に入れられず推進力を失って縁でジリジリと立ち止まる木偶になった。おめでとう!おめでとう。生きなければならない。生きなければならない。生きなければならない。なんて素晴らしいことだろう!!木偶は木で出来ている。中身がぎっしり詰まったヒノキでできている。芳しいじゃないか?この膨張を続けてぐるぐる回るぽっかりと空に佇む球体の上で。
あぁ、だから宇宙は、今までも膨らんでたけど今は相対的には縮んでるんだって。いつか外側に追いつく、縁に。留まるのかな。知らないや、俺は、木偶だし。
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