やっぱ弁当の用意もしないと
溝に汚れが溜まっている。それを指で擦ってみる。取れない。爪で擦ってみる。取れるが不快。爪の中に入りこれは良くない。
私は立ち上がり雑巾を手に取った。溝の汚れ。段差の溝、風呂場、シャワーや浴槽のある風呂場は洗濯機やタオルを置いている廊下と隣接していて、風呂場へ上がるには一段の段差を登ることになる。その段差の溝である。私は雑巾を手に屈んだ。溝を乾拭きする。取れない。溝は角であり雑巾で包まれた指はそこへ絶妙に届かない。私はため息をつき立ち上がった。
やることがある。これよりもやることが。こんな溝より大切なもの、やるべきことがある。それはパソコンに向かい文字を打ったり文字を読んだりすることだ。今こんな溝をやるべきじゃないのにやるべきことに加えていては。いやしかし溝もやるべきなのだ、例えば人を家に呼んだ時溝がこうでは溝もやれないやつなのかとため息の嵐がつく。それはいけない。しかしこんなのも言い訳なのだ、溝は今、今やるべきじゃない。
私はため息をつき終わって、廊下から部屋に戻る。パソコンの置かれている机に向かう。机の下を覗き込む。そこには掃除用洗剤のスプレー容器が置かれている。手に取った。左手に取った。右手には雑巾。
私は溝の元に帰り、雑巾にスプレーし擦った。溝を擦った。果たして溝は綺麗になった。
洗剤のオレンジが香り、廊下の清潔を示す。その郁郁たるアレに鼻を傾けているとなにやら不穏な影が鼻孔を潜った。臭い。何かが匂うのだ。
私は立ち上がり、それを見つけた。排水口である。台所の排水口である。そういえばいつ排水口ネットを最後に替えたっけ。
やるべきことがある。構ってる場合じゃない。やるべきことがある。
私はため息をつき、立ち上がった。
台所の戸棚を探る。
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