第4話 魔法

俺は早速本に書かれた通り魔法を使ってみることにした。

腕を前に出し手を開き、使う魔法の思想を巡らせる。

思想を高めたところで魔法名を発する。

「ファイヤーボール」

言葉を発するとともに手のひらからすごく小さな火の玉がヒョロヒョロと飛び出した。

思想とは全く異なるものだったが本当に魔法が使えることに感動した。

思想とは異なり小さな火の玉となったのもきっと魔力が少ないからだろう。

俺以外にもこのくらいの魔法は使えるはずだ。

他の魔法も試そうと思ったが、先程の小さな火の玉を出したことにより魔力がなくなってしまったようで発動することはなかった。


それ以外の本も読もうと思ったが、すでにかなりの時間が経ってしまったため早く村に戻らないといけない。

また明日にでも読みにくればいい。

外を確認すると、モンスターは諦めたようで既に外にはいなかった。

俺は念のため持ってきた方位磁石のようなもので村へ帰ることにした。

ここの小屋の場所を忘れないように、木に印をつけながら村へと帰った。


村に着いた時はちらほら村の人間が外を出歩いていた。

村の人間に見つからないように自分の家まで行くと、ひっそりと自分の部屋に入ることができた。

その数分後に母親のソーラが起こしにきた。

ギリギリセーフだ。

俺は寝てたように装い、起こしにきた際眠そうな仕草をしながら返事をした。

朝食を食べた後、部屋に戻り魔法のことを考えているといつも通りヘンリィから稽古の誘いがあった。

もう少し魔法について考えたかったが、いいことを思いついた。


「父さん、今日は父さんが相手じゃなくてモンスターを倒しに行きたいんだ!」


モンスターを倒せば魔力が上がるし、危なくなったらヘンリィが助けてくれる。

更にヘンリィに倒し方の見本を見せてもらうことで、モンスターを倒せる確率が上がる。

何としてでも今日はヘンリィを連れてモンスター退治に行きたい。


「モンスターを相手にするのはまだ早いぞ。モンスターは危険だからもう少し強かってからにしような」


断られたが、ここで引き下がるわけにはいかない。

一刻も早く魔力を上げ、まともな魔法を使いたかった。


「父さん、俺はもっと強くなるためにモンスターを倒したいんだ。そのためには父さんの力が必要だし、何とかお願いできないかな?」


少し上目遣いをしながら熱心にお願いをする。


「ケータ、お前成長したな。よし、父さんと一緒にモンスター退治に行こう!」


少し涙ぐみながらヘンリィは納得してくれた。

いい父さんだな、と思いながらヘンリィとともに森に向かうことにした。





森の中に入っていくと、今朝見た猪のようなモンスターがいた。

「ケータ、見ておけよ」とヘンリィが先陣を切ってモンスターに切りかかった。

俺の時のように、モンスターは切りかかったヘンリィにいち早く気付き、攻撃をかわそうとした。

しかしヘンリィは当然のようにモンスターが避けた方向に一瞬で二撃目を繰り出し、モンスターを倒した。


「ふう。少し難しいかもしれないが、敵が避ける方向は、体勢・目線を見ればおおよそ予測することができる。あとは二撃目を早く繰り出すために、一撃目の攻撃体勢と剣の振りを調節する必要があるんだ。まあこれは鍛錬と経験だな!」


少し得意気に説明していたが、実際には基本的ながら難しい動作だ。

ヘンリィの動きを思い出しながら動作の真似をしていると、ヘンリィが次の獲物を見つけたようだった。


「ほら、ケータ。あそこにさっきと同じモンスターがいる。父さんが教えたことを思い出しながらあいつを倒してみろ。ミスしても父さんが倒してやるから目一杯やってこい!」


俺は剣を取り出し、ヘンリィが言ったことを思い出しながら切りかかった。

案の定避けられたが、ヘンリィの言ったようにモンスターの体勢と目線を注視していると避ける方向が何となくわかる気がした。

一撃目の攻撃も避けられる前提で調節していたため、二撃目もスムーズに剣を振ることができた。

やった、と思ったがヘンリィのように一撃で倒すことができなかった。

まあ予想通りではある。子供の体で一撃は難しいだろう。

コツを掴んだし、これを何度も繰り返すだけだ。

更に二撃目を当てた後も攻撃を繰り出し、敵が避けそうになったら予測すればいいだけ。

俺はこの後、簡単に敵を倒すことができた。

敵を倒すと、少しばかり魔力が上がる感じがした。


その後もヘンリィとともに森にいるモンスターを倒し続けた。

魔力もまだほんのわずかだが上がっている気がする。

気付けばとっくに昼が過ぎていた。


「ケータ、そろそろ村に戻って昼食にするか!」


お腹は非常に減っていたので、今日はモンスター退治はこのくらいにして、村に戻ることにした。




村に戻り昼食を食べた後、俺はまたあの小屋に行こうと、家をこっそり抜け出して向かうことにした。

木に印をつけていたため、小屋は簡単に見つけることができた。

部屋に入る前に一度魔力がどのくらい上がったのか、魔法を使い確認しようとした。

「ファイヤーボール」

そう唱えると今朝より少しばかり大きくなった火の玉が飛んでいった。

休んで魔力も回復したこともあるのか、少しだが明らかに今朝より大きくなった。

それに感動しながらも、もっと魔法のことを知ろうと改めて小屋の中に入る。

俺はまた魔法に関する本を読むことにした。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

転生小説をバカにしてた俺が転生して無双する話 結城 天 @goiste

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ