第2話 同盟
夜、アリスは逃げていた。アリスの脅威から、アリスを脅かす存在から。そんな時、アリスは意外な人物を見つけた。その人物は倒れていた。
「さ、くら…?」
「……ん?ここは…?」
さくらは意識を取り戻したのかアリスを認識する。
「何かあったのかいさくら?」
「やらかしちゃったよー、天理ちゃん強いなー」
「天理にやられたのかい?」
「そうなっちゃうねー」
さくらは勘違いしていた。天理はさくらになら手を出してこないと、しかしさくらは天理を知らなさ過ぎた。天理はさくらにさえも手を出してくる。天理は本気だ。
「まさか天理がさくらにも手を出すとはね、今回の異常な環境も天理と朱音が関わっているかもしれない」
「なんで朱音さん?」
「天理はとあるグループで朱音と繋がっている。朱音もこの件に一躍絡んでいる可能性は十分にあるね、裏で操っているのは朱音の線もあるよ。どっちが黒幕かはわからないけどね、君はこの件には天理側の人間ではないということだね」
「天理ちゃん側というか天理ちゃんの暴走を止めないと、もし朱音さんが絡んでいるとしたら黒龍の兄貴か未来さんに伝えておいた方がいいかも」
「僕は携帯を持っていないんだ、黒龍に頼ると暴力沙汰になりそうだ、未来がよさそうだね」
「まあ、8時なら大丈夫だよね、何て伝えるの?」
「天理と繋がっているなら今すぐ暴力を辞めさせるように言ってもらわないと天理すら愚かな存在になりつつある」
「はぁ…おっけー、ちょっと休ませてー、ほんと殴られると結構来るね」
合唱部も終わり明日は朱音と誕生日パーティーを開くことに。そんな時、未来の携帯から着信音が。
「あ、はいもしもし未来です」
『あ、未来さんですかこんばんはー』
「さくらちゃん、どうしたのこんな時間に」
『赤の7っていう噂話知ってますか?』
「今日明智さんから聞いたよ、無差別に暴力が起きてるんだよね…7時前後に」
『そうなんですよー、私もその主犯にやられちゃいましたー』
「えぇっ、大丈夫なの?」
『主犯は分かってるんで私が止めますよ、でも共犯者が朱音さんの可能性があるんですよ、もしそうなら朱音さんを止めてくれませんか?』
「朱音ちゃんが?さくらちゃん止められるの?」
すると電話の主が変わった。
『やぁ未来』
「アリスちゃん?」
『天理と朱音はとあるグループで繋がっている、天理は何かしら企んでいる。逆に企んでいるのは朱音の線もあるからね』
「主犯者って天理ちゃん?」
『そういうことさ、天理の親友である明智とさくら、または僕、天理に関してはこの三人しか止めようがないよ。もし朱音が主犯者でも黒龍は呼ばないようにね、暴力沙汰になるからね』
「わかったよ、もしそうなら何としても止めるよ」
こうしてアリス、未来、さくらは同盟した。
同時刻、明智は店に立ち寄ろうとしたとき遭ってしまった。赤いフードの女性と。その女性は明智に声をかける。
「明智…」
「この声は…それにこの色は、天理君だね」
「さくらは私の邪魔をしてくるようだから仕方なくやった…」
「な、なに…君は親友ですら手にかけてしまうというのか、つまり私がここで止めても私もやられるというわけだね」
「そうだ…変な真似はしないことだな…」
それだけ言うと天理は去って行ってしまった。
「天理君とさくら君がやりあったというのか…あまり想像したくないね…私は中立を保て、という天理君からのメッセージなのかな?」
翌日
天理から暴力以上の恐怖をあじあわせてやると言われた北岡という女子生徒。いつも通り学校に登校するが妙に視線を感じる。教室にたどり着き机を見ると驚愕した。
机にはいじめっ子、などの悪口が書かれている。かつてアリスにしてきたときと同じような陰湿な行為。それを自分がされている。さらに女子生徒から罵声。
「あれー?アリスいじめてたいじめっ子がよく学校に来れたねー」
「えー、マジで、そんなことしてたの最低じゃん」
北岡の友達が北岡に話しかけてくる。
「ごめん北岡、色々聞いたけど無理、絶交しよ、私もいじめっ子の友達とか思われたくないし」
精神的攻撃。吐き気を催す北岡。体調が悪くなり保健室に行くことへ。
「都合が悪くなったら逃げるんだー?最悪じゃん、威勢のいいときはいじめてる時だけ?」
追い打ちをかけられ保健室へ到着する北岡。暴力よりも残酷な現実。
「私はただ興味本位でしただけなのに」
北岡は恨む。それはいじめたアリスでも、脅迫された天理でもない。過去の自分自身に。なぜあの時いじめてしまったのだろう。そうしなければこんな思いをしなくて済んだ。
アリスの気持ちを改めて実感する北岡。
「どうせならこんな思いをするのなら、死んでしまえば…」
北岡は自殺まで考え始める。
「おはよー天理ちゃん」
「ん…おはよう…」
昨日のことなどまるでなかったかのようにさくらと天理は挨拶を交わる。
その光景を不思議そうに見つめるアリス。
「天理ちゃん」
「なに…?」
二人は数秒目を交わす。
「何でもないよー」
「そうか…」
さくらは何かを天理に伝えたのだろう。そしてそれを天理は受け取った。その光景は睨みあい。さくらからの挑戦状。
「はぁ…誰に似たんだ…」
天理は面倒くさそうにつぶやく。
明智は昨日の一言が気になる。天理とさくらの一騎打ち。どちらかに連絡を取るべきだろうか。天理からは邪魔をするなと受け取った、となるとさくらから情報を聞いたほうがよさそうだ。明智はさくらに指定の場所に来るよう連絡した。
「密会がバレれば私もやられてしまうかな」
未来はいつも通り学校へ登校するが昨日の電話、朱音に問い詰める必要がある。考えていると現れる朱音。今日は二人きりになる機会がある。誕生日パーティーという機会で、あまりそういう雰囲気にしたくないけど黒龍もいるこの教室で問題が起きては大変だ。今は耐える未来。
「おはよー未来」
「おはよう、朱音ちゃん」
何事もなかったかのように挨拶を交わす二人だったがこれだけは聞いておきたかった。朱音は関与しているならなぜ知らなかったのか。
「でも昨日の明智さんの件、朱音ちゃんは都市伝説とか好きなのに知らなかったんだよね」
「まあね、そこまであたしも守備範囲高くないしねー」
朱音は情報通だ。ありとあらゆる噂話、都市伝説に興味を持ち知らないといったこと自体が珍しいのだ。
「珍しいよね」
「そんなことないと思うけどー?それよりも今日は部活終わったら行こうねー」
「そうだね、色々話したいよね、いい話ができればいいな」
「どうしたの未来」
「ううん、大丈夫だよ、大丈夫なことを信じているよ」
「よぉ未来、お前誕生日なんだってな、おめでとうじゃねぇか」
「黒龍さん、ありがとうございます」
黒龍ならこの問題を解決できるだろう、しかし暴力は避けられないのも事実、黒龍の目からはどうしても避けて解決したい。もしこの件に朱音が関わっているとすると親友である未来が止めるしか方法はない。
放課後、明智から呼び止められやむなく部活へ行けなくなってしまったさくら。場所は喫茶店。ただし天理はいない。
「やっほー香ちゃん」
「来たようだねさくら君、随分と普通だね」
「いつもは普通じゃないみたいな言い方だなぁー」
「天理君から聞いたよ、君は天理君とやりあったのかい?」
「あー、瞬殺されたけどねー」
「それはあまり見たくない光景だ、私も助けになりたいが」
しかしさくらは否定する。
「大丈夫、天理ちゃんのことは私に任せて、その気になれば香ちゃんもやられちゃうよー」
「私に黙ってみていてほしいというのかい?」
「私だって考えはあるよー、だから今回は天理ちゃんは私が止めて見せるよ」
「危険すぎるね、一度やられているみたいだからね」
「少しは後輩のこと信用してほしいなー」
「確かに、私とさくら君ならさくら君のほうが付き合いは長い。さくら君にもそれなりの考えがあるということだね?」
「もっちろーん、大丈夫、天理ちゃんの暴走は止めるから」
明智は天理をよく知るようにさくらもよく知っている。だからこそ今回の件はさくらに託すことを決めた。
「私が邪魔をしたら逆に迷惑かもしれないね、でももし何かあったら私に頼ってほしいところだね」
「その時はお願いしようかなー」
明智は見守る側だが天理ではなくさくらについた。
未来と朱音はケーキ屋についた。店で食べていくことにしたらしい。未来はショートケーキ。朱音はミルクレープだ。
「誕生日おめでとー未来」
「ありがとう朱音ちゃん」
「久しぶりに二人っきりって言うのもいいよねー」
「二人っきりだからこそできる話もあるかもね」
「まあそれもそうだよねー」
「朱音ちゃんって例の赤の7には関りはないんだよね?」
「どういうことー?」
「朱音ちゃんが共犯者、もしくは主犯者だったりね」
朱音は顔色を変えた。
「誰かなぁ…情報漏らしたのは、アリスちゃんかなぁ、でも携帯は持ってないし固定電話なら使えるかー」
「朱音ちゃん、関係してるんだね?」
「してるよー、でも悪いことはしてないよー」
「それはどういうこと?」
「じゃあ話そっか、あたしたちの目的について、そしてあたしの本当の目的についてもね」
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