・第三夜

 ざらざらと雑に漫画雑誌を捲ると、パラパラ漫画みたいに絵が動き出した。


 これは愉快だと思って捲るスピードを上げると、別々の漫画が混じり始めた。おお、と思っていたら……ページの中に吸い込まれた。


 うわ、こりゃヤバい。戦場のど真ん中だ。劇中登場人物として戦わなきゃ駄目なのか? 幸い、どうやらオレの劇中での立ち位置は指揮官らしいが……負けたら大変な事になるだろうな。この漫画のゲーム版というかコミカライズ対象のゲームはやりこんでいるが、何せ他の漫画がごちゃごちゃと混ざっているからな。


 要するにやる事は戦術シミュレーションだ。仲間を指揮し、敵の軍勢と戦う。


 味方は色々いた。本来このゲーム原作漫画に登場するキャラクター達。同じ雑誌に連載されていた漫画のキャラクター達……コラボ企画みたいになってるな。それはいいんだが、おい、ラブコメ漫画の登場人物とか混じってて戦闘力0なんだが!?


 ゲームによっちゃなんだかんだ理由を付けて戦闘力を調整したりするんだが、駄目だ、全然調整されてねえ。それでも、各作品の主要なキャラクターもいるからまだマシか。


 ええっと、作戦目標は……アノージキャラクター名が攫われたから奪還しろ? おいおい、施設のメカニックじゃねえか。何でも直すってネタにされてるあいつがいなくなりゃ、そりゃヤバかろうな。で、ええと、敵は。


 ……やべえ!? 馬っ鹿野郎、幾ら同じ雑誌で連載されてるからって巨大ロボットの連中を敵に配置する奴があるかあ!? しかもあいつら正義のロボット軍団の筈なのにがっつり敵側になってやがるし! ざっけんなよ、そんなの……!


「酷い夢、かしら? それなら私、お役に立つわよ」


 えっ!? 誰!? 声が聞こえた。見ると、見覚えのない女がいた。一瞬ちくわ大明神か何かと思ったがとんでもない。七色の髪の美女だ。チープなデジタル時計めいた小さな液晶画面がついた黒灰色のボディスーツを纏い、巨大な白い鎌を装備して柱時計の要素をあしらった騎士鎧めいた巨大ロボットを従えている。


「悪い夢を、終わらせてあげる。歪められた配役を唯してあげる。敵に回ったロボット達と私が戦えば、浄化して、元に戻す事が出来る。どう?」


 にっこりと女は笑った。俄然楽しくなってきた。俺も笑い返した。


「一緒に戦ってくれるんなら、それだけで悪い夢は終わったな。もう楽しい夢だ。それじゃ一緒に、やっちまおうか!」

「……そう。ええ、良くってよ」


 敵味方の巨大ロボが動き出す。生身の仲間達にオレは知恵を尽くし指示を出す。


 激しい戦いの果て、敵のロボット達を白い鎌が浄化して……



 夢か。途中から混じって出てきた女が誰かは分からなかったが、無茶苦茶だけど夢としちゃ結構楽しかったな。

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