6-4・大捜索

 ヒューゴの言ったとおり、神様達の側にいる天女達はやはり、協力してくれなかった。

 しかし地上に降りていて、裏の世界へ散らばっていた天女達は、すぐに集まってくれたので、あれからすぐにルイーズ達もチームに分かれて行動を開始した。

 ノランとマノンと数名の命美使いは希陽国きひこくへ。エマ&トムと数名の命美使いは、他の天女達と一緒に、トムがいることから、裏の世界の者たちがあまり詳しくないスタークル大陸へ。他のイブス大陸やトライウド大陸にも複数のチームが分かれて行き、パアス国のあるロブロード大陸へはルイーズ達のチームと、他の天女達複数が分かれて向かった。


 希陽国きひこくへ向かったノランとマノンは地図や情勢を見て、希陽国きひこくの要である来希京〈らいききょう〉へと向かった。

 希陽国きひこくは「太陽が射す希望の国」と言われる国で、来希京らいききょう希陽国きひこくの首都だった。

「こんなことで希陽国きひこくへくるとはね。さて、何処にあるのかしら」

 マノンはそうつぶやくと、側を歩いていた若者に声をかけた。

「ちょっとごめんなさい。少しお尋ねしてもいいかしら?」

 若者は少し背の高い二十歳位の男性で、マノンが声をかけると、すぐに止まってくれた。

「はい。どうかなさいましたか?」

「黒色の波模様が入ったローブを着ている、ヒョロヒョロな男を見なかった?」

「ローブ? ローブというのは、魔法使いのような服ですか?」

「そう。映画に出てきそうな」

「えっと……俺はちょっと見てないですね。迷子ですか、それとも人探しですか? もしお困りでしたら、警察へ一緒に行きましょうか?」

「いえ、大丈夫よ。変なこと聞いてごめんなさいね。どうもありがとう」

「すいません、お力になれなくて」

 若者がマノンに頭を下げて去っていくと、ノランは感心しながらマノンの横に立った。

「マノン、良い若者じゃったのう」

「そうねぇ、とても礼儀正しかったわ。でも見ていないとなると、あと私が気になるのは六重塔ろくじゅうのとうタワーくらいね」

「では行ってみるかのう、六重塔ろくじゅうのとうタワーへ」

 そう言うと、ノランとマノンは他の命美めいみ使いを連れ、来希京らいききょうの真ん中にそびえたつ、とても高い六重塔ろくじゅうのとうタワーへと向かった。


 パアス国のコンステレーション・パッサージュを捜索していたルイーズ達の元へ、ノランとマノンから早速、光る巻貝を見つけて破壊したと報告が入った。

 コンステレーション・パッサージュはすっかり元の綺麗なパッサージュへ戻っていて、活気が戻っていた。

「さすが親父とお袋だな。あの夫婦は表裏関係なく、世界最強夫婦だと思うよ」

 レオはそう言うと、何とか自分にも見つけられないかと隙間を凝視した。

「私もそう思う。でもあと九個か~。どこにあったんだろう」

 天井を見上げて捜索していたルイーズは、天井から目を離し、レオも隙間から目を離すと、別の場所にいたティメオとサラと合流した。

「なかった?」

「えぇ」

 報告を聞いてサラが肩を落とすと、レオはコンステレーション・パッサージュを眺めた。

「親父とお袋によると、六重塔ろくじゅうのとうタワーっていう、観光地にあったって。希陽国きひこくの首都にあるタワーで、首都のシンボルみたいな場所らしい。となると、あいつは観光地のような、人が集まる場所へ置いている可能性があるってことか?」

「さっき探した場所にもなかったし、ここにもありそうにないですね。次は俺たちも、もっと観光名所へ探しに行きましょうか?」

 ティメオがそう言うと、ルイーズもサラも、ティメオの意見に賛同した。

 レオもしばらく考えていたが、現在の時刻がもう夜中を回っていることを考え、捜索を明日の朝から再開することにした。

「もう夜中だし、一旦家へ帰ろう。いざという時に力が出ないんじゃあ、困るからな。さぁ、帰るぞ」

 レオは三人を連れ、一旦、ノランの家へと瞬間移動して行った。


 次の日。光る巻貝が爆発するまで残り一日となった。

 夜中にトライウド大陸の国で一つ見つかり、光る巻貝は残り八個。ルイーズ達は引き続き、パアス国のパパン市で捜索をしていた。

 パパン市は床に綺麗なモザイクタイルを使い、壁や照明も豪華な装飾が施されている、パパン建築が有名。今日捜索しているパパン駅もパパン建築で、とても由緒ある駅だった。

 初めて来たティメオとサラは、豪華な駅と人の多さに目を丸くした。

「どうやって探すの、ここ」

 サラはキョロキョロ周りを見回した。

「とりあえず歩き回るしかないよね」

 ルイーズがレオに聞くと、レオも同じ意見だった。

「そうだな。それしかないよな。行こう」

 四人は広い駅を探し歩き始めた。

 昼ごろはパパン駅にある、表の世界でとても有名なパパンパン屋街でお昼ご飯を簡単に済ませた。

 このパン屋街は、ここへ行けば世界中のパンが食べられると有名で、何度も来ているルイーズのおススメを、四人で少しずつ分け合いながら、少し息抜きして食べた。

それからもしばらく探していると、エマとトムから、スタークル大陸で一つ見つけて破壊したと連絡が入った。

「これであと七個か」

 ティメオが世界地図を広げると、ルイーズも地図を覗いた。

「そうね。絶対にパパン市に一つあるって感じるんだけどな。お母さんたちどうやったんだろう」

 レオからエマと一緒にいる上級命美めいみ使いへと、耳に付けている命美めいみ使いの通信装置・イヤーカフを伝って連絡を取ってもらい、ルイーズはどうやって見つけたのかと、エマに聞いた。

 すると、エマもルイーズと同じように人の集まるような場所を探していたが、マノンから、目を閉じて耳と心を澄ませるようにアドバイスをもらい、それを実行してみたら見つけられたと教えてくれた。

「私もやってみる」

 ルイーズは何か光る巻貝を感じ取れないかと、目を閉じ、余計な考えを一旦捨て、耳や心を澄ませた。

 すると頭の中で、パパンの街並みを高速で過ぎたかと思ったら、パパン門の上にある光る巻き貝が浮かんできた。

「パパン門かもしれない。パパン門の上、人が誰も登れない場所にあるかもしれない」

 ルイーズは目を開けると、レオに頼んだ。

「おじさん、パパン門の上よ」

「わかった」

 レオが手を出すと、ルイーズとティメオ、そしてサラがレオの上に手を重ね、四人はパパン門の上へと瞬間移動した。

 パパン門は古くからあるパアス国でも歴史価値のある門だった。門にはモザイクタイルが張り巡らされ、キラキラとしていて、年に一回、国がキチンと手入れをして景観を維持していた。

 ルイーズが周りを見ると、やはり門の上の中央に、光る巻貝がそっと置かれていた。

 光る巻貝はこの前見た時よりもさらに赤く光っていた。

「あった!」

 ルイーズが指さすと、レオが三人を下がらせた。

「〝破壊魔法〟」

 レオが光る巻貝に魔法をかけると、光る巻貝は粉々に砕け散り、風と共にどこかへと飛んで行った。

「これであと六個か。あぁ、同時だったな」

 ちょうどノラン達からも連絡が入り、イブス大陸にて光る巻貝を一つ破壊したと報告があった。

 こちらも一つ破壊したと報告し、光る巻貝は残り半分の五個となった。

「時間がない。ルイーズ、パパンやパアスに、他の光る巻貝がありそうか?」

「ちょっと待って」

 何か感じ取れないかもう一度目を閉じてみた。

 けれどもうパアス国にはありそうにはなかった。

「もうパアスにはなさそう。地図を見てみる?」

 ルイーズが聞くと、ティメオは持っていた地図をサッと広げてみた。

「そうだな……これを見る限り、大きい大陸や希陽国きひこくは全て一つずつ見つかったってことか。他にどこか気になる場所とかある?」

「地図貸してもらっていい?」

「あぁ」

 地図を受け取ると、ルイーズは地図とにらめっこを始めた。

 命美星めいみせいの世界地図を広げると、上を北として、地図の真ん中には中海洋〈ちゅうかいよう〉という海が広がり、赤道から少し上の方の真ん中に希陽国きひこくがあった。

「世界地図的にはまず希陽国きひこくが中心よね。けど見つかったから……」

 ルイーズは次に命美星めいみせいで大きな四つの大陸を見た。左側にはパアス国もあるロブロード大陸。左下にはイブス大陸。右側にはトライウド大陸があり、真ん中あたりの赤道の下にはスタークル大陸があった。

「大陸は一つずつ見つかった。けどもうこの四つの大陸にはなさそう……となったら他は……」

 次にルイーズは細かい小さな島を見た。

ロブロード大陸の近くにはサングル島。トライウド大陸の下にはカメハナ島。他にも小さな島国や諸島もある中、ルイーズはスタークル大陸の上あたりにある、赤道直下のビューティブ諸島という諸島に注目した。

「ビューティブ諸島……ここに行ってみたいわ。何か引っかかる気がする」

「ビューティブ諸島? 初めて聞いた諸島ね。ティメオは?」

 サラが聞くと、ティメオも初めて聞いたようだった。

「俺も初めて聞いたよ。数字の形をした島の集まりなんだなぁ、どんな場所?」

「えっと……」

 ルイーズは少し思い出しながら答えた。

「私も行ったことはないけれど、温暖化のニュースの時なんかはよく名前が出てくる諸島よ。中海洋ちゅうかいよう赤道直下の諸島で旧国家諸島。もう国としては機能していなくて、観光諸島として残っているの。もう時間もないし、急がなくちゃ」

 四人は急いでビューティブ諸島へ瞬間移動していった。

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