第6話 宴

「お姉ちゃん暁人と私ははもうお腹ペッコペコピコ!」


「ハハッ。初めまして。暁人です」


自己紹介と同時に右手を差し出す。


「この星気は…堕とし子様ですね。

リーナの姉のサーナと言います」


固く握手を交わす。

彼女の厚く温かい手のひらに包まれた右手。

そこには包み込むような優しさとどこか懐かしい感覚があった。

胸中をそんな気持ちに満たされていると


「ささっ堕とし子様。宴の準備は出来ております。」


(異世界堕としをされたから堕とし子って事でいいのか。星気ってなんだろう。とりあえずいい人っぽいし話を聞いてから考えよう)


2人に案内されて二階建ての青緑色の外壁の大きな建物の中に案内される。

中央の大きな扉を開けた先には貴族の舞踏会のような豪華絢爛な内装と大中様々なテーブルに所狭しと置かれた数多くの食べ物があった。


「うわぁすごいご馳走だぁ!」


「ふふっ。堕とし子様が降臨なされたのです。

当然です」


「さぁ早く食べるピコ!!」


「そうね。すぐに村長と他の皆を読んでまいりますのでしばしのご辛抱を。堕とし子様。」


ガチャガチャと鳴る鎧の音を響かせながら会場を後にするサーナ。

純白の鎧と網タイツ。

部屋の光を反射してどちらも光っている。

暁人はその後ろ姿を眺めていた。


(見た目とは裏腹にとても腰の低い嫌味のない人だな。お姉さんの感じからすると。2人のお父さんの村長さんってどんな人なんだろう)



「ねぇねぇ!暁人!見てみて!」


「ん?どうしたの琴香?」


「この水着凄く可愛くない?私の好きなインフルエンサーがプロデュースしたんだ」


「わぁ~本当だ!琴香に似合いそうだね。

赤と白の色合いになによりおへその空白がハートに見えるのが可愛い」


「だよね!これ着て夏に海に行こうね!」


あぁあの水着姿見たかったな。

琴香にとっても似合って可愛かったんだろうな。

お腹のハート柄が特に良かったよ。

そうこんなふうに


「私めのギャランドゥに何かありましたかな?

昨夜魔物の体液を塗ったので艶感は完璧ですからな。見惚れてしまいましたか?堕とし子様。ガハハ」


また元カノのとの思い出に浸っていた暁人はいつのまにか前にいる男のヘソ周りの毛を眺めていた事に気づく。

ハート型に整えられているギャランドゥに。


「堕とし子様初めまして。ピコクル族族長。ガランと申します」


ガランと名乗った男は筋骨隆々の偉丈夫で短く整えられた短髪に片耳が大きく欠けているうさ耳。

力強い眼に彫りの深い顔。

紺色の胸当てにゆったりとした黒いズボン。

さぞかし若い頃はモテたであろう。渋みを感じさせる漢だった。


ただ一点を除いて。


身長は2mを超えている。

なので座った暁人の目線の高さにちょうどある。

黒いツヤツヤとした天使の輪を彷彿うとさせるハート型のギャランドゥが。


(この村は渋さと可愛さの調和を目指しているのか。

これがシブカワイイというジャンルなのか。

差し色ならぬ差し可愛いなのか。

レイヤード感覚なのか。わりといいかもしれない)


琴香との思い出とも相まって少しカルチャーショックを感じた暁人だった。


「は、初めまして。暁人です。よろしくお願いします。」


「ガハハ。今回の堕とし子様は謙虚だな!

よし!皆んな!堕とし子様の降臨を祝って乾杯だぁ!」


「「「「「オオッ!」」」」」


いつのまにか集まっていた。

老若男女のピコクル族。


「では星光の導きがあらんことを。

飲めや。歌えや。騒ぎあい。そして愛情を伝えよう殺し合おう。乾杯。」


「「「「「乾杯!」」」」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

イケメンに彼女を奪われたので異世界では幸せになりたいです。 くるくる胡桃 @kuru_kuru_kurumi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ