ヴァンがなんとかしますからねっ!


 翌日。


 フィンとヴァンが去った食堂で後片付けをするメイドを横目に、レガットは本日の予定を考える。


 主であるサファイアが……日中は地下室に籠っている為、領主としての仕事を裁量しなければならない。無論、最終的な決定権は総てサファイアにある。


 レガットはあくまで、彼女の負担を減らすべく、仕事を整理するだけだ。


 本気でそう思っている。


 思案顔で指示を飛ばして行くレガットへ、一人のメイドが指示を仰いだ。


「お客様、ですか・・・」

「はい。旅の神父様のようです。数日の間、泊めてほしいと・・・如何致しますか?」

「断る理由はありません。お通ししてください」

「かしこまりました」


 メイドは頭を下げて食堂を出て行った。


 断る理由は無い。そうは言ったものの、神父とは厄介な・・・と、苦く思いながらレガットは思案を重ねる。サファイア様へお知らせするのは、日が落ちてからだ、と。


 まずは先のお客様、フィン様とヴァン様へ話を通さなくては。それから・・・ああ、部屋を準備してお客様をお迎えしなくては。


 神父には、食事制限があっただろうか? それも事前に聞いておかなくては。ヴァン様のときのように……あまり歓迎しているとは言い難いが、お客様へご不便な思いをさせるワケにはいかない、と。


 レガットは、やるべきことを頭の中へ次々とリストアップして、部下へどんどん指示を出して行く。


※※※※※※※※※※※※※※※


「神父?」

「はい。旅の神父様が数日の間、滞在させてほしいとのことです」

「ふ~ん。それがどうかしましたか?」


 レガットへきょとんと言い返すフィン。その、直接的つ、端的な質問へレガットは固まってしまう。


 そしてレガットは、そっとフィンから視線を逸らし、神父と聞いて僅かに顔をしかめたヴァンの方へと話を振った。


「・・・ヴァン様はどうかされましたか?」

「あ、いえ・・・特にどうというワケではありません。少し、神父や教会関係者が苦手なもので」


 ヴァンの言葉にハッとするレガット。


「ヴァン様もですか?」

「? はい。私も、とは?」

「その、実はサファイア様も教会関係者を少し苦手としておいでで・・・それで、ですね。少々お願いしたいことがありまして・・・」


 声を潜めたレガットへ、


「いいですよー? ボクらもお世話になっている身ですからねー。ボク達にできることなら、なんでも言ってください」


 ドンと胸を張るフィン。


「ヴァンがなんとかしますからねっ!」


 続いたその言葉は、なんとも他力本願だった。


「マスター・・・貴方は全く・・・」


 レガットのなんとも言えない表情。


 ヴァンは、ゆっくりと溜息を吐き出した。

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