様々な証言がある。


「ここら一帯を治める領主は、夜な夜な近隣住民の生き血をすする吸血鬼」

「代替りをしてからは、領主様の姿を見た者は誰もいない」

「前の領主は、その吸血鬼に殺されたらしい。いや、もしかしたら・・・まだ吸血鬼になって生きているかもしれないな。吸血鬼が生きているとすれば、だが」

「近頃、みんなどこかしら悪いんだ」

「原因不明の体調不良を訴える者が増えてな」

「今の領主に変わってから、農作物が不作続き。呪いに違いない」

「城に勤めている人が美形♡」

「格好いい人だったわねぇ。あたしがあと、もう二十年若けりゃ・・・」

「やっだ、もうおばちゃんったらっ」

「城の客が村の女をたぶらかしやがった」

「城で働いてる奴ら? ああ、地元の連中じゃねぇこたぁ、確かだな」

「数日前から、怪しい行商人が城へ出入りしている。うち一人は、不吉な黒髪黒瞳をした子供。不気味だ」

「人喰い熊が村を破滅へ追いやるっ!」

「ご飯食べてきなさいよ?」

「女性にとてもモテそうな方です」

「あのお兄さん、すっごく綺麗だったわ! あたし、あの人になら血を吸われても・・・きゃっ、ヤだもうっ! なに言わせンのよぅっ!?」

「畑、手伝ってくれんかの?」

「あの金髪野郎っ、ちょっとくらい顔がいいってだけで、俺のことを馬鹿にしやがって…………云々。長い愚痴なので以下略」

「あのお人は、医者かの?」

「腹減った」

カラスは死を呼ぶ。早く追い出すべきだ」

「人に話聞くときにゃ、それなりに誠意ってもんがあんだろうがよ? 情報料、早く出せ。は? 無い? ケッ……」

「明日は雨の予感」

「城の方、ですか? 息子を助けて頂きました」

「え? 今日はシチューよ」

「酒飲もうぜ? 酒! ああ゛? 手前ぇ俺の酒が飲めねぇってのかっ!? うっ、おぇ・・・」


 様々な証言がある。


 まあ、最後の人には酷い目に遭ったが・・・


 気を取り直して。


 共通しているのは、吸血鬼の噂。

 城へいるのは美形だという話。

 城へ客人がいるという話。


 役に立つ情報は、これくらいだろうか?


 さて、どう動くべきか。


 鏡。

 聖水。

 白木の杭。

 十字架。

 聖書。

 銀のナイフ。

 普通のナイフ。


 とりあえず、準備はできた。


 ロザリオはいつも身に付けているし、聖句は暗記してそらで言える。大丈夫だ。


 今、あの城には、客人がいるという話だが・・・わたしも城へ滞在したいと言えば、中へ入れてくれるだろうか?


 吸血鬼の棲むという城へ、乗り込もう。

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