虚弱な兄と比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い!

 タイトル回収回。


 そして、途中でネイサン視点からセディー視点へ切り替わります。


__________



「そうよ、ネイト。あなたは優しい子だもの。そんなことしないわよね?」


 と、必死の顔でわたしを見詰める二人。


「なぜ、わたしがセディーを止めないといけないんですか?」

「そんな昔のことをまだ恨んでいるのっ? わたし達は家族でしょうっ!?」

「そうだ、僕達はお前の親なんだぞっ!?」

「今更っ・・・ネイトに縋るなっ!? 虚弱なと比べて蔑ろにして来たクセに、親面してももう遅い! お前らは、僕らの親じゃないっ!?」

「そうですね」


 怒っているセディーに同意する。


「誰がお前達を育ててやったと思っているっ!?」


 なにを言ってるんだか?


「あなた達に育てられた覚えはありませんよ。わたしとセディーの二人を育ててくれたのは、この家の使用人達。そして、お祖父様とおばあ様です。幼少期のわたしは、隣国のクロシェン家で育ちましたし。あなた達と親子だなんて、思ったことはないですよ。親らしいことをされた覚えもないどころか、まともに話したことすらない。ただ単に、血が繋がっているというだけの迷惑な他人です。早く縁を切ってください」


「「っ!?」」


 セディーとわたしの言葉に、なぜか傷付いたような顔をする二人。


 意味がわからない。


 わたしの除籍を、縁が切れたことを、さっきまで笑っていたクセに。


―-✃―――-✃―――-✃―-―-


―-✃―――-✃―――


―-✃―――


 結局、犯罪者になる度胸はないようでエドガー・ハウウェルはハウウェル侯爵家からの除籍届にサインを書いた。


 そもそも、除籍などは貴族家当主の独断でできる。わざわざ本人の同意なんて必要無い。


 まあ、元貴族で平民に落ちた犯罪者だなんて、底辺もいいところ。貴族、平民どちらからも蔑まれ、疎まれ、虐げられる。


 プライドだけは無駄に高いこの男が、そんな暮らしができる筈はない。


 ある意味強制とは言え、自分で選ばせて・・・・やったんだ。文句など、絶対に言わせない。


 我ながら、性格が悪いとは思うけど・・・


「ネイト。先に馬車に戻っててくれる?」

「え? でも、セディー」


 警戒する顔で、項垂れている二人を見やるネイト。暴れたりしないかと疑っている模様。


「大丈夫。ライアンもいるし。最期にちょっと話をするだけ。すぐに戻るから。それに、ね?」


 ぽんと懐を叩くと、


「・・・わかった。あんまり無理しないでね?」


 渋々という顔で頷いたネイトが部屋を出て行く。


 ここから先は――――


 ネイトには、見せたくない。


 まぁ、ネイトへの『殺人未遂』を口にすることだって、かなり嫌だったんだけど。


 本当に、この人達は手を煩わせてくれる。


「では、今ここで選んでください。ハウウェル家とは無関係な他人として市井で暮らして行くか、このままこの家で終生暮らして行くのかを」


 項垂れていた顔に、希望が宿る。


「ああ、やっぱりセディーは優しいのね」


 にこりと安心したように微笑む母。


「そうよね。家族だものね」

「ええ。この家を選ぶなら、二人だけで暮らしてくださいね」

「え?」

「ちなみに、市井に下りる場合は、遠くの国へ行ってもらいます」

「とおくの、くに?」

「ほら? 下手に市井に下りて、ネイトの目に触れることになったら目障りじゃないですか。僕はもう、ネイトの視界にあなた達を二度と入れたくない。それくらいだったら、この家に暮らす程度は目を瞑ってあげようと思いまして」

「セディックっ!?」

五月蠅うるさいですね、まだ話の途中ですよ? ああ、言い忘れていましたが、僕は護身用に銃を携帯しています。そんな怖い顔で近付かれると、思わず撃ってしまうかもしれませんね」


 にっこりと微笑むと、ざっと下がる男。


「っ!?」


 どうにかしろ、という風に執事へ視線を向けるが、執事は首を横に振る。


「セディック様の仰る通りに」

「っ……」


 ちなみに、この家の刃物や武器になりそうな品物は、使用人によって厳重に管理されている。馬鹿共が変なことを考えないように、とのお祖父様の命令で。


「それで、あなた達はどうしますか? 早く選んでください」

「セディー……どうしてこんなことをするの?」

「どうするのかと訊いているのは、僕の方です。ネイトを待たせているんですよ。早くしてください。それとも、今すぐこの家から身一つで追い出して、外国行きの船へ乗せてもいいんですよ? もう、他人なんですから」


 そう言うと、母は泣き崩れた。


 相変わらず・・・本当に、なにも変わらない。目障り極まりない。


__________



 300話越え以上で、やっとタイトル回収なスローペース。(´ε`;)ゞ


 しかも、それを言うのはネイサンじゃなくてキレたセディーという……

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