エル君にばかり構ってずるいですわ~。
翌朝には、馬車を三台に分けてフィールズ家の別荘を発った。
うちの馬車にはわたし、セディー、ライアンさん。フィールズ家の馬車にはエリオット。テッドの家の馬車にはテッド、レザン、リールが乗ることに。
「帰りは僕一人ですか・・・寂しいです」
そう言ってしょんぼりしている奴がいたけど、それは仕方ないと思う。だって、自分の家の馬車に乗るのは当然だし。なんて思っていたら……
「んじゃあ、俺が付き合ってやる!」
「わぁ! ありがとうございますメルン先輩っ♪」
と、テッドがエリオットと相乗り。防犯上、わたし、エリオット、レザンがバラけて乗るということは決まっているから、馬車を移動できるのはリールとライアンさん(セディーが好きな馬車に乗ってもいいと許可を出した)の筈が、まさかのテッドが馬車移動。まぁ、本人がいいと言っているのだから、いいのだろう。
道中、全員分の宿代はセディーが出すことに。迷惑を掛けたお詫びと感謝の意だそうだ。
町で見掛けたお土産を買ったり、宿を決める前に買い食いしたり、適当に入ったお店で食事をしたり、二人部屋と三人部屋を複数だったり、四人部屋を二つ取ってわちゃわちゃと過ごした。そういう風にしているうちに、エリオットとライアンさんも仲良くなった模様。
寝る前には、セディーとライアンさんが疲れていなければ手作りしてもらった問題集を開いて勉強。すると、それまで元気だった奴。(主に二人)が疲れた様子になるのが面白かった
こうして、フィールズ家の別荘からそれぞれの自宅(学園寮)まで戻って行った。
ハウウェル侯爵家に戻ると、お祖父様とおばあ様が嬉しそうな顔で出迎えてくれた。
「お帰りなさい、セディー、ネイト。無事でよかったわ」
「はい、ただいま戻りました」
「楽しかったようだな」
「はい」
お土産に買って来たものを一緒に食べて、久し振りにお祖父様とお喋り。
フィールズ家の別荘に着くなりセディーが倒れたことや、エリオットに便宜を図ってもらったこと。回復してからは、朝の散歩、午後からダンスの練習をしたことなどを話した。
「エリオット君がネイトに女性パートを教えてくれてね、僕と一緒に練習できるようにしてくれたんですよ」
「まあ! それは是非とも見てみたいわ!」
と、なぜかこの話題に食い付くおばあ様。
「フィールズ家には、後でよくよく礼をせねばな」
「ああ、そう言えば二人共。アナスタシア様からお呼ばれしていますよ」
「ターシャおば様が?」
「ええ、『エル君にばかり構ってずるいですわ~。帰って来たら、わたくしのおうちにも是非遊びに来てくださいませ~』、ですってよ」
「そうですか」
「あと、リヒャルト君からもお誘いがありましたよ。セルビア家にも、ちゃんと顔を出しなさい。セディーは特に、ケイトさんとの時間を作るのよ」
「はい」
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エリオットに連絡を取ってセディーと二人でフィールズ伯爵家にお礼をしに行ったら、エリオットのご両親に大歓迎されて、なぜか逆にお礼を言われましたよ。
「エルちゃんと仲良くしてくださって、本当にありがとうございます。エルちゃんが嬉しそうな顔をしていて、本当にっ……」
「あんなに学園に行くのを渋っていたエリオットが、お友達と遊びに行きたいと言うとは……」
「もうっ、なに言ってるんですかっ!? 恥ずかしいからやめてくださいよっ!?」
涙を流して喜ぶルクレツィア夫人と、噛み締めるようにうんうん頷くフィールズ伯爵。二人の様子に顔を赤くして恥ずかしそうにしているエリオット。
相変わらず、フィールズ伯爵家は家族仲がいいようです。
「お父様とお母様はあっち行っててください!」
と、またもやエリオットに追い出される夫妻。前も見た光景だなぁ。
「はぁ……えっと、すみません。その、僕、お友達が少なくて……それでその、ハウウェル先輩とセディック様がまたうちに来てくれたので、お父様とお母様が感激しちゃったみたいで……」
「ふふっ、まぁ、僕もネイトがお友達と仲良くしているのを見ると嬉しくなりますからねぇ」
クスリと笑うセディー。
まぁ、恥ずかしそうにするエリオットの気持ちもわからなくはない。わたしも、うちにアホ共が来たときのお祖父様とおばあ様、セディーの微笑ましいという視線が気恥ずかしかったから。
それからエリオットとお茶をして、ターシャおば様に招待されていることを話すと、
「ターシャおばあ様は、ハウウェル先輩とダンスをするつもりなのかもしれないですね……」
思案げに言うエリオット。
「え? ターシャおば様がダンス? 大丈夫なんですか?」
心配そうな顔をするセディー。
「一応、スタンダードワルツは実際に僕がペアを組んでちゃんと踊れることを確認して、その上でハウウェル先輩と踊る為に張り切って練習もしているんですけど・・・やっぱり、僕も行きます。おばあ様が無茶をするようなら、がんばって止めますっ」
「エリオット君が一緒なら、心強いよ」
と、フィールズ公爵家に一緒に行く約束をした。
日程を決めて、フィールズ公爵家の方へ連絡。
翌日。それならいっそのこと、『皆さんでお茶会を開きましょう』というお返事が。
参加者はわたしとセディー、ターシャおば様、エリオット、ケイトさんとリヒャルト君、フィールズ嬢とルリア嬢と、なんだかちょっと規模が大きくなってしまった気がする。
案内状には、『よろしければ、ネヴィラ様もどうぞ』と書かれていたけど、
「参加人数が多いみたいだから遠慮します。あなた達二人で行ってらっしゃいな」
と、おばあ様は苦笑。
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