俺が勝ったら部長の座を空け渡せ!
翌日。
今日から授業が始まる。
配布されたクラス表によると・・・
「おー、またハウウェルだけクラス違うのなー」
レザンとテッドは今年度も同じクラスで、わたしは別のクラスのようだ。
「……俺も違うが?」
ぼそりと言ったリールを、
「え~? リールは上位クラスだからクラス違うのは当然じゃんよ? って、もしかして一人だけ上位クラスなのが寂しいとか?」
ニヤァと笑って
「なっ、そんなワケあるか!」
「ま、飯んときは一緒に食ってやっから、あんま寂しがらなくていいぜ」
と、朝食を終えて授業に向かった。
✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐
二年生としての授業は、こないだセディーに教えてもらったところがバッチリ出たので、多分大丈夫だと思う。
それから、別に示し合わせているワケじゃないけど、いつもの面子とお昼を一緒に食べて、午後の授業が終わって、放課後。ちなみに、リールは朝テッドに揶揄われたからか、お昼の間はずっと不機嫌だった。
そして、今――――
「今年度より、乗馬クラブの部長となりましたケイト・セルビアです。皆さんが楽しく活動できるよう、精一杯努めさせて頂きますので、宜しくお願いします」
凛とした態度で部員達へと新部長就任の挨拶をしているケイトさんの横に、レザンと一緒に並んでいるワケです。
「そして、こちらが新しい副部長になったレザン・クロフト様とネイサン・ハウウェル様です」
やっぱり、こないだの話は冗談とかじゃなかったみたいで、わたしとレザンが副部長なのは間違いないっぽい。みんなの前でケイトさんに紹介されましたよ。
ちなみに、ケイトさんが挨拶をしている最中、面白くなさそうな顔をしている男子生徒がちらほら見えていますが、レザンを見て口を噤んでいる模様。まぁ、レザンはデカくて目付きの悪い強面だからな。図らずも、以前にケイトさんに言ったように、番犬みたいな役割になっているようだ。
あのときには、まさかこんなことになるとは想像もしていなかったなぁ。まぁ、番犬代わりをすることも、ケイトさんを支えることについても異存は無い。ただ、心の準備はさせてほしかった。
そしてなぜか、わたしを睨んでいる人がいたりするんだけど・・・
「質問です」
と、手を挙げたのは女子生徒。見ない顔だから、もしかして新一年生なのかな?
「はい、なんでしょうか?」
「副部長は、ケイト様が選んだのでしょうか? 縁故採用はあまり宜しくないと思いますが? その辺りは如何なのでしょうか?」
キッとわたしを睨み付ける女子生徒。ぁ~、ケイト様、ですか……この女子生徒、ケイトさんのファンのようですね。
それに、わたしがケイトさんの婚約者の弟だと知っている模様。そうじゃないと、縁故採用だなんて言葉は出て来ないよね?
「クロフト様とハウウェル様については、卒業した前年度の部長が副部長にと推薦してくださったので、わたしがお願いしたワケではありません。それに、このお二人は乗馬がとても達者なので、それで選ばれたのだと思いますよ」
縁故ではない、と否定をしてくれるケイトさん。でも、女性初の部長就任となるケイトさんを、身内になる予定のわたしが支えると心強いだろう、という理由で選ばれたというのなら、わたしは縁故採用ということにならないのだろうか?
「それを証明できますか?」
挑発的にわたしを見据える後輩女子生徒。
「ふむ。いいだろう。なにをすれば証明になるだろうか? 今から数時間、馬に乗り続ければいいだろうか? それとも、アスレチックを走らせればいいだろうか?」
レザンが勝手に応えると、
「なら、勝負です!」
声を上げる彼女。
「うん? 勝負というのは?」
「わたくしと勝負です、ハウウェル様!」
なんか名指しされたっ!?
「そして、わたくしが勝ったら、ハウウェル様には副部長の座を退いて頂きます!」
「それなら、ケイト・セルビア! 俺もお前に勝負を申し込む! 俺が勝ったら部長の座を空け渡せ!」
女子生徒に便乗してケイトさんへ宣戦布告をしたのは、先程から不満そうな顔をしていた男子生徒。
「え? ちょっ、待ってください! なんでそんな勝負」
「はあ? 自分でそこの女顔に勝負を申し込んだクセになにを言っている」
・・・よし、あの野郎は敵だ。
「落ち着け、ハウウェル」
まだなにも言っていないというのに、ぐっとレザンに肩を掴まれる。
「ははっ、わたしは落ち着いているよ?」
うん。どうやってあの野郎に吠え面を掻かせてやろうかを、今考えている最中だ。
「お前が勝負を申し込まれたのは、あの女子生徒だろうが」
「……まとめて掛かって来い、的な?」
声を潜めるレザンに小さく返すと、
「勝手に決めないでください。それにあなたは、去年……いえ、もう一昨年前になりますか。前部長が副部長にと打診をしたときに断っていたではありませんか。大会に出るというのに、他の部員の面倒なんて見ていられない、と」
ケイトさんがあの野郎にそう答える。
「乗馬の腕で役職が決まるというなら、大会で何度も表彰台に乗っている俺の方が上に決まってる!」
そう彼が自信満々にそう言うと、最初にわたしに勝負を挑んだ彼女が、泣きそうな顔でおろおろとケイトさんを見ている。
まぁ、彼女はケイトさんのファンのようですけど、自分の発言がこうなるとは思っていなかったんでしょうね。
「はいはーい、部長になるには腕だけじゃなくて人望が絶対必要だと思いまーす!」
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