大丈夫だハウウェル。そんな心配はご無用。


 翌朝。


 いつもの通りに起きて、身支度をして朝食に向かうと・・・


「おおっ、朝から豪華ですね!」

「ふふっ、レザン君がよく食べるから、料理人が張り切ったみたいなの。遠慮せず沢山食べてね」

「ありがとうございます、ネヴィラ様」

「……いや、少しは遠慮しろよお前」

「リール君も遠慮は要らないわ。どんどん食べて」

「あ、ありがとうございます……」


 という、わちゃわちゃした賑やかな声が・・・


 ああ、そうだった。


 昨日はアホ共が、計画的にうちにアポ無し突撃をして、図々しくも泊まって行ったんだったな。


「はぁ・・・」

「よう、ハウウェル。どしたよ? 溜め息なんか吐いちゃってさ」

「・・・おはようございます、おばあ様」

「無視かよー? そういうのよくないと思うぜー」

「大方、まだ寝惚けているのだろう」

「……ああ。昨日は遅くまで遊んでいたからな」

「もう、ネイトったら」


 仕方ないんだからと笑うおばあ様。


 まぁ、寝起きでテンションは低い。しかし、問題はそこじゃない。と思っていると、


「あら、セディーも起きて来たのね。おはよう」


 どうやらセディーも起きて来たようだった。


「……おはよう、ございます……」


 いつにも増してぼんやりとした顔と低い声とで応えるセディー。


「おおー、さすがハウウェルのおにーさん。寝起きもそっくりなんですね。おはようございます。朝食お先に頂いてます」

「・・・?」


 テッドの声に反応したのか、セディーはきょとんと首を傾げてじっとテッドの方を見詰める。


「お、おにーさん?」


 たじろぐテッドに、


「ほら、セディー。ネイトのお友達ですよ。テッド君とレザン君とリール君」


 おばあ様がアホ共を紹介する。


「・・・ネイトの、おともだち? ・・・ああ、うん。おはよう」


 納得したのか頷いて席に着くセディー。


「おはようございます、セディック様」

「……おはようございます」


 折り目正しく挨拶をするレザンと、ぺこりと頭を下げるリール。


「もう、ごめんなさいね? この二人ってば、昔から朝は苦手で。起き抜けはいつもこうなのよ。別に不機嫌だとか怒っているワケじゃないから、気にしないでちょうだい。食べてるうちに目を覚ますと思うわ」

「はい。ハウウェルで慣れているので大丈夫です、ネヴィラ様」

「そう?」

「そうですそうです。朝からぼーっとした顔で、いつも無愛想に朝食食べてますからねー」


 否定はできないけど・・・と、思いながら朝食を食べる。寝起きは頭が回らないし。


「まあ、いつも一緒に朝ごはんを食べているの?」

「はい。朝食に限らず、時間が合えば食堂で顔を合わせますからね」


 レザンが言うと、こくこく頷くリール。


「クラスは違いますけど、寮は一緒ですからねー。な? ハウウェル」

「・・・そうだね」

「わー、いつもながらに寝起きは声低ー」

「ふふっ」


 そうやって朝食を食べていると、


「そう言えば、君達、今日はどうするの?」


 目が覚めて来たのかセディーが聞いた。


「うお、おにーさんが起きた!」

「や、一応さっきから起きてはいるんだって。かなりぼーっとしてたけどね。ネイトも、ちゃんと起きてるよね?」

「うん」

「いつの間にかハウウェルも起きてたっ!?」

「うん。君達も他に予定があったりするでしょ。忙しいんじゃない? 馬車の手配はしておくから。ごはん食べたら、すぐに帰ってもいいんだよ?」


 にっこりと微笑む。とっとと帰りやがれ? と思いながら。


「ふっ、大丈夫だハウウェル。そんな心配はご無用。なぜなら俺達は、早目に寮に入るくらいの暇人。休み一杯、予定は空っぽだからな!」


 ふふんと胸を張って、余計なことを言いやがるテッド。そして、


「なんで、おにーさんさえよろしければ、もっと勉強を見ていただけないでしょうか?」


 くるりとセディーに向き直って頼んだ。


「時間があるときならいいよ」


 セディーもセディーで、にこりと承諾するし。


 こうしてアホ共は、図々しくもうちへの滞在期間を延ばしやがったっ!!


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