両親とは折り合いが悪い。
「用意が良過ぎると思うんだけど?」
「うむ。テッドが、一応用意しておけと言っていたからな」
「……今日は、テッドの家の馬車を出してもらった」
やっぱり確信犯かこの野郎共め。
「あ、こらバラすな二人共! ぁ~・・・いや~、ほら? ハウウェルん家までどれくらい時間掛かるかわからなかったしさ? 念のため持って来てよかったぜ! まさか、マジで泊めてくれるとは思ってなかったからなー、ははは」
誤魔化し方が下手だ。そして、わたしからめっちゃ目を逸らしているし。
「・・・もういいよ。来ちゃったものは仕方ないし。君らを泊めるって決めたのはお祖父様だからね。でも、テッドのうちの馬車はどうするの?」
「あ~、うちの馬車はもう帰してあるぜ。あれ、店の方の馬車だし」
「・・・あのさ、お祖父様が泊めるって言わなかったらどうするつもりだったの?」
「うん? 普通に歩いて帰ったが」
当然のように応えるレザン。
「それ、君は平気かもしれないけど、テッドとリールは大丈夫なの?」
「あー、ま、隣町まで歩けばうちの支店があるから、なんとかなるだろって」
「楽観的過ぎ。一応、ここはお祖父様のお膝元だからそうそう早まったことをする輩は出ないとは思うけど、君みたいにいいとこの子が気軽にふらふら歩いてたら危険でしょ」
テッドは、ケイトさんが買い物をしたお店をうちの店と言っていた。即ちそれは、貴族御用達のお店ということになる。しかも、支店があるということは、そこそこ大きな商家だろう。
「あんまり、いいとこの子って雰囲気はしてないけどね」
「ふっ、よく言われるぜ。ま、そこら辺はさ、レザンが付いてっから心配してねぇ。それに俺、次男だし。兄ちゃんにはもう子供いっから跡取りはバッチリだぜ」
「……テッドはもう、叔父さんだったのか」
どこか感慨深げにテッドを見やるリール。
「そーそー、俺ってば実はもう叔父さんなワケよ。っつっても、ちび共にはテッドにーちゃんって呼ばれてっけどな? ちなみ、姪っ子のマイブームは三つのときからおままごと。そして俺は、じーちゃんばーちゃんから赤ん坊、イヤミなお姑、更にはペットの犬までこなせるオールラウンダーな役者だぜ!」
「あ~、だから偶に妙な小芝居が入るワケね」
クロシェン家にいた頃、わたしとロイもよくスピカのおままごとに付き合わされたっけ? 女の子って、おままごとが好きだよねぇ。テッドは、現在進行形で姪っ子さんのお相手をしてあげている、と。結構いい叔父さん……というよりは、お兄さんをしているのかな?
「妙とは失礼な! 姪っ子には大好評なんだからな!」
ムッとした顔で抗議するテッド。
そして、おままごととは言え家族の話で思い出した。コイツらには言っておかないといけない。
「・・・あのさ」
「うん? どうしたハウウェル、真剣な話か?」
「あ、なんだそれ、俺の話も真剣だっての」
「はいはい。その話はおいといて。とりあえず、わたしの話を聞け? 勝手にうちに押し掛けて来たのは君らの方なんだからね」
「……聞こう」
「わたしと両親の折り合いが悪いってことは知ってるでしょ」
「おう、なんか前に言ってたハードな話なー」
「ハードというか・・・ぶっちゃけ、セディーもお祖父様もおばあ様も、両親とは折り合いが悪い」
「え? マジで?」
「マジな話だよ。だから、あんまり変なこと言ったり聞いたりしないでよね」
「……一つ、聞いていいか?」
「なに? リール」
「お前の両親達とは、なにがあってそんなに折り合いが悪いんだ?」
「ぁ~……端的に言うと、昔ピクニックに行って、馬車で数時間掛かる上、あんまり人通りの無い場所に乳母と二人で置き去りにされた。しかも、両親はわたし達を置き去りにしたことに気付かず、セディーが家令に『
「ぅっわ……」
「しかも、監督不行き届きという名目で乳母は解雇された。更には、雨に降られて濡れたままお腹を空かせて何時間も歩いたせいか、翌日から風邪ひいて寝込んじゃってさ。両親は顔も見に来なかったよ。乳母は解雇されてたから、侍女達が仕事の合間に交代で面倒見てくれたけど。それで、お祖父様とおばあ様が激怒して、わたしはおばあ様の親族に預けられた」
「成る程。それで、ハウウェルは帰国子女になったというワケか」
「まあね。で、四年くらい向こうにいて、十歳でこっちに戻されたんだけど……」
「けど、って、まだなんかあるのかよ?」
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