僕の勉強法って、かなりアレだからなぁ。


「いやー、おにーさん、ホンっト教えるの上手いですねー」

「そう? ありがとう」

「あ、そうだ。歴史とかの暗記系って、どうしたら覚えられますかねー? コツとかってあります? 俺、暗記苦手で」

「コツっていうか……歴史物とか戦記物の小説を読む、とか? 観劇に行くのでもいいかも。なるべくは史実に沿ったものの方がいいよ。オリジナリティ溢れる作品はまぁ……ある程度史実を理解するまではやめといた方がいいかな? 最初から間違って覚えちゃうと困るだろうからね」

「い、いいんですかっ? 小説とか劇とかってっ!?」

「? いいんじゃない? どうせ覚えるなら、楽しく覚えた方がいいでしょ。まぁ、読書や観劇が嫌いなら、無理しなくてもいいと思うけど」

「なるほど……」

「小説とかじゃなくても、史実を基にした絵本ってあったりするし。どんなことを基にして書かれているのか? 基の出来事とは、どういう風に違っているか? そういう風に考えながら読むと、絵本でも結構楽しく読めるよ? 当時の為政者の思惑とかも透けて見えたりもするし」

「はあ……その辺りは、俺にはまだちょっと難しいかもです」


 まぁ、セディーのそれは一般的な本の読み方じゃないとわたしも思う。


 「ハウウェルの おにーさん って、 ガチで 頭いい のな?」


 テッドにひそひそと囁かれた。


 うん。頭良いのはわかってたけど、今の話を聞いて、もしかしたらセディーはわたしの予想よりもかなり頭良いのかもしれないと思ったよ。


「あ、質問いいですか? おにーさん」

「どこかわからないところがある?」

「あ、そうじゃなくって。なんて言うかこう……どういう風な勉強したら、おにーさんみたいに頭良くなれますか? 全教科得意になる方法があるなら教えてください! 是非とも!」

「う~ん……僕の勉強法って、かなりアレだからなぁ。多分、普通の子には全然当てにならないと思うんだけど……」


 テッドの質問に困ったような顔をするセディー。


「そこをなんとかっ、お願いしますおにーさん!」

「ぁ~……まぁ、そこまで言うなら別にいいけど。単純に、どんな本でも、本を読むときには集中して読めばいいと思うよ」

「へ? それだけ、ですか?」


 拍子抜けしたようなテッド。そして、なにげにリールが耳を澄ましている。


「うん。それだけ。具体的には……なんて言うか、話が通じなくて苦手だと思っている人と、毎日毎日最低でも数時間。長ければ半日以上とか一緒に過ごさなきゃいけなくて、その人の相手をしたくなくて、その人のことを意識から追い出す為に、ものすごっく集中する感じかな? あとは、その人の相手をしたくないが為に、もう何度も読んだ本を暗記するまで繰り返し読み返すとか?」


 クスクスと笑いながら、けれど全く笑ってない目でセディーが言う。


 なんというか・・・アレだっ!? これ、苦手な人って絶対あの人のことだよ・・・


 セディーはわたしと違って、あの人と過ごす時間が長かったからなぁ・・・そりゃあ、話の通じないあの人と長時間一緒に過ごすのはキツいというか、つらいよねぇ。


「お、おにーさん? え~っと、冗談、ですよね?」


 いきなり様子の変わったセディーに、テッドが戸惑ったようにわたしを見る。『どうしたよ? おにーさん』と、口パク。全くもう、要らんこと聞くからでしょ。


「セディー」

「ん? なぁに? ネイト」

「後でセディーのお勧めの本とか教えてくれる?」

「うん。いいよ♪」


 にこりとセディーが頷いたところで、夕食の用意が整ったと侍女が知らせに来てくれた。


 よかった・・・


 後でテッドには、余計なことは言うなと言い聞かせておかなきゃ。全くもう・・・


 それから、お祖父様、おばあ様、セディーとアホ共と一緒に夕食を食べた。うん。料理人達も張り切って料理を作ったみたい。いつもよりちょっと豪華だ。


 そして、よく食うアホは遠慮なんか全く感じさせない食欲で何度もお代わりをして、セディーとおばあ様を驚かせていた。もしかしたら、顔には出さないけどお祖父様も驚いていたのかもしれない。


 驚いているお陰か、あんまり学園での話を振られなかったのが幸いか。


 夕食後。アホ共を泊める為の部屋まで案内しなさいとお祖父様に言われて、アホ共を部屋まで案内した。ちなみに、「一人一部屋ずつ用意するのは手間でしょうから、三人一緒でいいですよ。いきなり来たのは俺らですから」とテッドが言ったので、三人まとめて一緒の部屋だ。


 うちの使用人、仕事早いなぁ。もっと遅くても……なんて思いながら、


「あ、そうだ。着替えとかどうするの? テッドとリールはかく、レザンの服はサイズが無さそうなんだけど」


 と、聞いたら・・・


「うん? 着替えなら持っているぞ」


 という返事。


「・・・なんで、服まで持って来てるのかな?」


 勉強道具もしっかりと持参しやがっていたことだし。


「用意が良過ぎると思うんだけど?」

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