わたし以外のみんなが楽しそうだなっ!?
「あ、そう言えばおにーさんってめっちゃ頭いいんですよね?」
「え?」
「ハウウェルが自慢してました」
「そうなの?」
テッドの言葉に、嬉しそうにわたしを見るセディー。
「まぁ、セディーが頭良いのはホントのことでしょ。いつも勉強教えてくれるし」
学年で十位以内を六年間もキープだなんて、すっごく難しいことだと思う。しかも、手を抜いてその順位って・・・どう考えても、頭が良いでしょ。一応、手抜きをすること自体には賛否両論があるとは思うけどね?
「実は俺ら、在学中のライアン先輩にはめっちゃお世話になってたんですけど、そのライアン先輩に勉強を教えていたのはおにーさんだって聞いたんですよ。もしおにーさんさえよろしければ、俺らの勉強を見てもらえないでしょうかっ!?」
・・・あ~、成る程ねー。それが狙いでうちに来たのかー。
「よし、帰れ?」
にっこりと笑顔で言うと、
「えー? 俺はおにーさんに聞いてんだけど。それに、大丈夫だって。ちょ~っと勉強教えてもらうだけだから、大好きなおにーさんは取らないって」
ひらひらと手を振って笑い飛ばすテッド。
「ふふっ、もう、ネイトったら。いいじゃない、ねぇ? セディー」
「おばあ様!」
「そうですねぇ……」
セディーが思案する素振りをしたとき。バタンっ!? と応接間のドアが開いて、
「ネイトの友人が来ているようだな!」
お祖父様が現れました。
「あら、お帰りなさい。あなた」
「うむ。今帰った。わたしはセディックとネイサンの祖父のヒューイ・ハウウェル。侯爵をしている。さあ、ネイト。友人を紹介しなさい」
「お、お祖父様……」
お祖父様まで嬉しそうな顔で、アホ共を紹介しろと……
「……ぁ~、あれです。そっちの目付きの悪くてデカいのが、レザン・クロフト。クロフト伯爵家の三男です」
適当な紹介をすると、
「レザン・クロフトです。初めまして。ヒューイ様。ハウウェルとは、騎士学校時代からの同期です」
お祖父様がレザンに近寄って、握手を求めました。
「ほう、クロフトの三男か。ネイトが世話になったな。礼を言う」
「こちらこそ、ハウウェルにはお世話になっています」
「で、そっちがテッド・メルン。商家の子です」
「はじめまして、侯爵様」
緊張した面持で応えるテッド。さすがに、お祖父様相手では硬くなっている。
「最後に、リール・グレイ。上位クラスの特待生です」
「初めまして」
リールはガチガチだ。
「そうか。特待生か。頑張りなさい」
「はい、ありがとうございます」
うんうんと、アホ共を笑顔で眺めるお祖父様。そして、
「今日はもう遅いからな。泊まって行くといい」
赤く染まった窓の外を見て言いました。
「っ!?」
もうこんな時間かっ!? 気付かなかった……
「だ、大丈夫ですお祖父様。今から帰れば、十分間に合いますからね! そうです、暗くなる前にさっさと帰しましょう! 可及的速やかに!」
「ネイト。
お、お祖父様に窘められてしまった!
そして、アホ共がうちに泊まることに・・・
「ねえ、ヒューイ。この子達、セディーに勉強を教わりたいそうなのよ」
上機嫌な様子のおばあ様に、
「ふむ。いいだろう。では夕食までまだ時間があるからな。セディー、見てあげなさい」
楽しげに頷くお祖父様。
「ふふっ、わかりました。それじゃあ、ライアンにも手伝ってもらおうかな? 在学中、この子達の勉強をずっと見て来たのはライアンなので」
「わかりました、セディック様」
にこにこと了承するセディーとライアンさん。
「「「ありがとうございます!」」」
満面の笑顔のアホ共。
なんか、あれだ・・・わたし以外のみんなが楽しそうだなっ!?
「ネイトもおいで」
もしかしたらこれが、孤立無援という心情なのかもしれない・・・
というのはかなり大袈裟だけど、微妙にしょっぱい気分のまま、アポ無しで人のうちに突撃訪問して来たアホ共と一緒に、セディーとライアンさんに勉強を教わることに・・・
そして、二年生で習うことの予習を中心に勉強することになった。
「はいはーい、ここってどう解くんですかー?」
「ああ、ここはね……」
「こっちは、こういう風に考えると解り易いですよ?」
「ふむ。成る程」
「……この、応用問題を教えてほしいのですが」
「これはちょっとややこしいよね。でも……」
と、案外まじめに勉強をして――――
「ネイトはわからないとこある?」
「いや、わたしは大丈夫」
「そう?」
「うん。ここはこないだ、教えてもらったから」
「そっか」
ちょっと残念そうな顔をするセディー。
「いやー、おにーさん、ホンっト教えるの上手いですねー」
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