今すぐ、そんな婚約は解消してくださいっ!?!?
「お義父様はどこですっ!?」
聞き覚えのある声が、お祖父様を出せと喚いていました。
その、喚いている人は使用人達が止めているのも聞かず、ずかずかと屋敷に入って来ました。
・・・
「セディーが婚約したなんて、どうしてわたくしとエドガー様に教えてくれなかったのですかっ!? お陰で、お友達の前で恥を掻いたではありませんかっ!?」
ぁ~……まぁ、セディーがケイトさんと婚約したことは、
どうやら、セディーが婚約したことを母に伝えた、どこぞの
ちなみに、お祖父様は今お仕事中なので、母の相手をすることはないと思います。
「……全く、騒がしいですね。先触れも無しに突然来るとは何事ですか。メラリアさん」
と、冷ややかな声が玄関に降りました。
「お義母様っ……」
母はおばあ様の、全く歓迎していないという表情と冷たい声とに若干怯みながらも、
「セディーのことですっ! 一体どういうことですかっ!? どうしてわたくし達になんの断りもなく、勝手にセディーの婚約を決めたのですかっ!?」
おばあ様を睨み付けて吠えました。
「しかも、聞いたところによると、その娘は暴力を振るうような乱暴者で、以前に婚約を解消されたような娘だって言うじゃないっ! なんでわざわざ、そんな問題のある傷物の娘をセディーと婚約させたんですかっ!? そんな酷い婚約、セディーが可哀想じゃないですかっ!?」
これは・・・わざわざケイトさんのことを非好意的に母に吹き込んだ
全く、余計なことをしてくれる。
それにしても、ケイトさんが乱暴者って・・・なんだかとても違和感がありますね? ケイトさんは確かに、
「幾らお義母様達がネイトばかり可愛がっているからって、なんでセディーにこんな嫌がらせの婚約を押し付けるんですっ!? セディーが可哀想じゃないですかっ!! 今すぐ、そんな婚約は解消してくださいっ!?!?」
相変わらずというか、なんというか・・・
「断りも無くいきなり押し入って来て、なにを言うかと思ったら……馬鹿なことを。セディーの婚約について、あなたに口出しする権限などありません。用はそれだけかしら?」
「わたくしはセディーの母親ですよっ!」
「だからなんなのです? 我がハウウェル侯爵家の当主は、旦那様です」
「お義父様が侯爵だから全部決めるだなんて、そんなの勝手過ぎますっ!」
いや、勝手なこと言ってるのはどっちなんだか?
「乱暴者なんて、そんな野蛮な娘はセディーに相応しくありません! セディーが可哀想です!」
そもそも、セディーが自分でケイトさんに申し込んだ婚約なんですけどねぇ。その辺りのことは、
まぁ、
おばあ様はどうするつもりなんでしょうか? と思っていたら、
「人の婚約者を愚弄するのはやめて頂けませんか?」
これまた冷ややかな声が響いた。
「セディー!」
現れたセディーに嬉しげな顔をする母。
というか、なんで今の声のトーンと言われた言葉とを聞いて、嬉しそうな顔ができるんだか? セディー、結構怒ってると思うんだけどなぁ。
「聞いたわよ。乱暴な娘と無理矢理婚約させられたんでしょう? 可哀想に。今すぐそんな婚約は解消してあげますからね。政略かもしれないけど、幾らなんでもあんな酷い婚約なんてあんまりじゃない。さ、うちに帰りますよ」
「勝手に決めないでください」
嫌そうに溜め息を吐くセディー。その後ろで困ったような顔をしているライアンさん。
ぁ~、なんかちょっと申し訳ない気がする。
「どうしたの? セディーが家の為に犠牲になる必要なんてないのよ? ……そうですよ、お義母様。家の為に必要な婚約だって仰るのでしたら、ネイトと婚約させればいいじゃないですか! 隣国の、それも幾つも年下の子をこちらに貰うより、多少傷物でも年が近いこの国の子の方がネイトもいいんじゃないかしら?」
本当に母には、呆れさせられる。
「いい加減にしてくださいっ! なんでネイトが出て来るんですかっ!? ・・・僕の婚約は、僕が自分で決めたことです。そもそも、あなたには僕達の婚約に口を出す権限なんてありません。どうぞ一人でお帰りを」
「セディー? どうしてそんなことを言うの? わたくしはただ、あなたのことを心配しているのよ?」
不思議そうに、困惑したようにセディーを見詰める
「要りません。迷惑です」
セディーは顔を
「なんで? どうして? セディーはそんなことを言うような子じゃなかったでしょう? ・・・お義父様とお義母様のせいですか? お義母様達がセディーをこんな風に変えたの?」
「・・・違います。僕は元からこうです。ああ、言っておきますが、泣いても喚いても無駄ですよ。ここには、あなた達がネイトにしたことを知っている人しかいませんから。誰もあなたに、同情なんてしません」
「な、にを言ってる、の?」
「先程のあなたの言葉も、みんなが聞いていますから。そもそも、お祖父様とおばあ様。そして僕だって、あなた達がネイトにしたことを、誰も許していない。それなのに、よくここに顔を出せましたね?」
一層冷ややかになるセディーの声。
・・・わたしの聞いたことのないトーンの声だ。これはきっと、凄く怒っている。
「なんで、今更そんな昔のことを持ち出すの? そのことなら、何度も謝ったじゃないですか? そうですよね? お義母様」
花畑においてけぼりにされたのはもう十年程前だけど、わたしが騎士学校に入れられたのは四年程前のことなんだけどな?
「・・・ええ、わたしとヒューイには謝りましたね。ネイトに謝ったところは見ていませんし、そういう話も、ネイトから一切聞いたことはありませんけど」
謝られたことが無いというか、もう何年もまともに会話が成り立ったことも無い気がするからなぁ。
というか、普通の会話自体をすることすら諦めているのかも。
お祖父様おばあ様、セディーがまだ怒ってくれているというのはわかったけど・・・
許す許さないとかの話じゃなくて、わたしはもう
わたしの中で彼らは、そんな感じの存在だ。
「あなたは変わりませんね」
溜め息を吐いて首を振るおばあ様。
「メラリアさんがお帰りよ。お見送りをして。それから、今度から人様の家に行くときにはちゃんと先触れを出しなさい。いきなり来られても迷惑ですから。それではごきげんよう、メラリアさん」
と、おばあ様が言うと侍女達が母の腕を掴んで外へ連れて行く。
「なっ、ま、まだお話は済んでません! セディーの婚約の話がまだっ……」
とかなんとか喚いていたけど、外に出されて行った。きっとこのまま、家まで直行だろう。確りと送り届けてくれるに違いない。
「全く、メラリアさんにも困ったものですね。まぁ、あの調子でセルビア伯爵家へ訪問されでもしたら大変ご迷惑を掛けてしまいますからね。先にうちに来たのは不幸中の幸い、と言ったところかしら?
「向こうには、僕の方から言っておきます」
「わかったわ」
「・・・すみません、おばあ様」
「あなたが謝ることじゃないでしょう? そんな顔しなくていいのよ、セディー」
「おばあ様……」
「それに、ネイトが聞いてなくてよかったわ」
少し複雑そうな顔で、けれどセディーを安心させるように微笑むおばあ様。
「はい」
・・・実はバッチリ聞いてました。とは言えないので、ここを離れることにした。
わたしは・・・
ちょっと悩んで・・・誰かが話したら、誰かから聞いたという
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