お前ら休みってどうするん?


 在校生は次学年に進級するまでの間に少しの休暇があり、その間学園に留まるもよし。家の方に帰るもよし。羽目を外さなければ、そこそこ自由です。


「なー、お前ら休みってどうするん?」

「ふむ・・・俺は家に帰って、留年を免れたことの報告だな」

「……俺は寮にいる」

「わたしは、うちの方でのんびりしたいなぁ」


 まぁ、わたしはそのつもりなんだけど・・・実際にのんびりできるかは不明だよねぇ。進級するに当たって、二年生の分の予習があるし。


 リヒャルト君からも、『あそびにきてくださいね。おやくそくですよ? ネイトにいさま』と手紙が来ていた。ケイトさんから渡された手紙(セディーにも、わたしとは別で手紙を送っているとのこと)だけど・・・


 ケイトさんはリヒャルト君に会いに毎週帰省しているそうですが、さすがにテスト期間前後は帰れないので、リヒャルト君は寂しがっていたらしいです。『休みになったら遊びに行きますね』とケイトさんに返事をしたので、セルビア家に行くのは決定です。


 あと、個人的にケイトさんに頼みたいこともあったりする。一応、セディーにOKをもらってからケイトさんにお願いした方がいいかな? 学園にいるときには、テッドとレザン、リールがいるから切り出し難かったんだよなぁ。コイツらの前ではちょっと・・・絶対ニヤニヤされそうだから嫌だ。


 あ、なんかやっぱり、ちょっとバタバタするかも?


「なるほどなー」

「そう言うテッドはどうするんだ?」

「あー、俺は……一旦うち帰って、家の手伝いとかその他諸々な感じ?」

「ふむ。家業の手伝いか。頑張れよ」

「おう、ついでに遊びに行ったりとかなー? っつーことで。じゃーな、また近いうち会おうぜ!」


 と、いつもの面子と別れて、お祖父様の家に向かった。


 朝から渋滞の馬車に揺られて、着いたのは夕方に近い時間。


 疲れたー、と夕食を食べてお風呂に入って、爆睡。


 翌日は、ぼーっとしながらゆっくりと起きた。


 学用品の準備をしたり、二年生の予習をしたり、息抜きにお祖父様とボードゲームをしたり、おばあ様とお茶をしたりして・・・


「ネイト、勉強しよっか」


 にこにこと上機嫌なセディーが部屋に来たので、ケイトさんのことを頼んでみることにした。


「あ、セディー。ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」

「なぁに?」

「その、ちょっと・・・」

「ちょっと?」

「ケイトさんと買い物に行きたいんだけど、いい?」

「・・・え? ネイト? なんでケイトさんと買い物?」


 わたしの言葉に、ショックを受けた顔をするセディー。


「あ、ごめん。やっぱり、まずかった?」


 ケイトさんはセディーの婚約者だし……


「ぁ、ううん・・・ネイトが、ケイトさんと買い物に行きたいなら、行ってもいいよ?」


 寂しそうな顔で、力なく首が振られる。


「・・・ケイトさんと、買い物・・・」

「あ、えっと、もし心配ならセディーも一緒に」

「行くっ!?」


 行かない? と口にする前に、食い気味な返事が返される。


「なんだ、僕も一緒に行ってよかったんだ。よかったぁ……」

「? えっと、忙しかったら別に」

「大丈夫! バッチリ予定は空けとくから!! あ、でも、ケイトさんの予定もあるからね? その辺りは聞いてみないとわからないよ?」


 と、買い物はケイトさんにお伺いをしてからと決まった。


「ところでネイト、ケイトさんとなにを買いに行くつもりなの?」

「えっと……その……女の子が、喜ぶようなものをケイトさんに教えてもらおうと思って……」


 顔が熱くなって行くのが、自分でもわかる。


「ああ、スピカちゃんへのプレゼント?」

「うん」

「そっか。一緒に行こうね」


 にこにこと頭を撫でられた。


 とりあえずスピカへのプレゼント選びの為の買い物は、ケイトさんに手紙を出してからの返事待ちとなった。


 それまではのんびりと・・・は、あんまりできなかったなぁ。


 勉強は勿論のことなんだけど、やって来ましたよ。ライアンさんがうちに! 荷物を積んだ馬車でお引越しして来ました。


 なんでも、ご実家が遠いのでうちに住み込みでセディーの秘書として働くとのことです。フィッセル子爵と夫人もご一緒で、ライアンさんを宜しくお願いしますと、お祖父様とセディーに挨拶をして帰って行きました。 


 仲の良さそうなご家族でしたねぇ。卒業パーティーでご挨拶をした兄君のウォレンさんとも仲は良好のようですし。

 

 それにしても、先輩がうちの中で働くというのもなんだか不思議な気分ですねぇ。


 翌日から、セディーの隣に並ぶ、制服を着ていないライアンさんを、なんか新鮮だなぁと思って眺めていたときでした。


 なにやら、屋敷の中がざわついているような気配がしました。


 ざわついているのは玄関の方みたいなので、来客だろうか? と思っていたら――――


「…………っ!?」


 なにやら、誰かが大きな声で喚いているみたいでした。


 なんの騒ぎだろう? と思って、こっそり玄関を覗きに行くと・・・


「お義父様はどこですっ!?」

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