『三バカ』扱いをされている気がする。


「概ねその通りだとは思いますが、胸を張って言うことじゃないですよ」


 クスクスと笑みを含んだ声がテッドを窘めた。


「ご一緒してもいいですか?」

「ライアン先輩! どうぞどうぞ。それで、先輩の方はテストどうだったんですか? ちゃんと解けました?」


 席に着いたライアンさんへ、少しだけ不安そうに尋ねるテッド。


 まぁ、ライアンさんは余裕だと言ってわたし達に勉強を教えてくれたけど、そのせいでライアンさんの成績が落ちたりするのは心配だよねぇ。特に三年生は、卒業が懸かっていますし。


「ええ。大丈夫でしたよ」

「よかった~」


 はぁ~、と安堵の溜め息。


「テッド君とレザン君が嫌じゃなければ、午後も一緒に勉強をしませんか?」

「ライアン先輩男前~!」

「よろしくお願いします!」

「その、本当にいいんですか?」


 ついさっき、心配した顔をしていたのに、迷わず頷いたテッドとレザン。二人に対し、リールは遠慮がちだ。


「はい。リール君も遠慮しなくていいですよ。それじゃあ食べましょうか」


 と、昼食後にテスト勉強をすることになった。


✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰


 ライアンさんに勉強を教わって・・・


 頭が沸き掛けたレザンにいきなり、


「付き合え」


 と危うく外に引っ張って行かれそうになって抵抗したり、


「飽きたわー」


 と集中力の切れたテッドがペンを投げたり、


「人に教わっといてその態度はなんだっ、このアホ共がっ!」


 とリールにどやされたり、途中で買い出しに行ったりと・・・


 わちゃわちゃと過ごして、夕食を食べて解散。


 まぁ、リールの言うことはもっともだと思う。ライアンさんは笑っていたけど……学年末テストの最中に、わざわざ勉強を教えてもらっているというのに、飽きたというのはとっても失礼だし。


 一応、勉強に飽きるというテッドの気持ちも少しはわからないでもないけどね? こういう、勉強で苦労するときにはちょっとだけセディーがうらやましくなるんだよねぇ・・・あの記憶力を少し分けてほしいものだよ。


 それはかく、なんでわたしまでリールにどやされるかな?


 わたしは、レザンとテッドに挟まれていただけなのに。


 なんだか、あの二人のせいでリールには、『三バカ』扱いをされている気がする。すごく納得がいかない。


 あの二人とわたしを、一組で考えるのはやめてほしい。大体、あの二人は同じクラスだけど、わたしはクラスが違うのにさ?


 そんなこんなで、学年末テストをどうにかこうにか終えて――――


「よっしゃ今日でテスト終わりっ!?!? これでもう、勉強漬けの日々から解放されるっ!!!! さあ、遊びまくろうぜっ!!」


 テンション高く主張するテッド。


「・・・ああ、そうだな。今日でようやく、机にかじり付く日々ともさらばだっ! さあ行くぞハウウェルっ!?」


 据わった目で木剣を二振り握り締め、わたしの方へ向かって来るレザン。


「っ!?」


 こないだの、「・・・試験が終わってから・・・」というあの不穏な呟きを実行に移そうとしているらしい。


 勉強で鬱憤の溜まったレザンの相手なんか、冗談じゃないっ!!!! ただでさえレザンは、脳筋の剣術バカなんだ。あんなのに付き合って打ち合いなんかしようものなら、身体がガタガタになる。というか、奴が手加減しなかったら、怪我とかもするだろう。わたしがっ!!


 ということで、わたしはレザンから逃げることにした。猛ダッシュで回れ右。


「なぜ逃げるハウウェルっ!?」

「お前に付き合ってられるかっ!!」


 追い掛けて来るレザンから逃げていると、


「いいじゃねーかよ、遊ぼうぜ!」


 なぜかテンションの高いテッドまで付いて来た。


「お前ら二人で遊んでろっ!?」


 テスト最終日に、なんでまた長期休暇最終日と似たようなことになってるかなっ!?


 しかも、テスト期間前後の生徒が変な行動をすることはよくあるらしく……奇行をする生徒という風に見られたっ!?


 その上、レザンとテッドと同類だと思われるとか・・・最悪だっ!?


✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰

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