ああ、嫌なこと思い出した。
「・・・それは、茶化しているのかな?」
なんとも言えない反応だ。
「……いや、なんか声低くね? 別に茶化しちゃいねーって! つか、ハウウェルはさ、自分が美人だって自覚あんのかよっ!?」
不穏な空気でも感じとったのか、顔を上げるテッド。その頬がちょっと赤いような?
「? 美人、って・・・まぁ、わたしはおばあ様似だけど」
若い頃から美人だというおばあ様は、今もお綺麗だ。ということは・・・ふむ。客観視をしてみると、『わたしは、若い頃のおばあ様にそっくり』だ。ということは・・・逆説的には『わたしも、一般的には美人と言われる枠に当てはまる』というワケか。
「・・・成る程。わたしは、美人だったのか」
「ふむ。やっと自覚したのか」
「え? マジで気付いてなかったのかっ!?」
びっくり! という表情のテッドに、まじまじと見られた。
「? それが女性ならまだしも、鏡を見て、『自分は美人だ』とか、『自分は美しい』って思っている
それはナルシストというか・・・
「わたしはドン引くけど?」
「そ、それは確かに……いや、でも普通は……」
「ハウウェルは今まで、容姿で舐められることが多かったからな。無意識に認めたくなかったのだろう」
「ぅわ、レザンになんか偉そうなこと言われたっ!? 脳筋のクセに!」
「ふっ、『美人な男は大抵、その容姿が地雷になっているから自分で気付くまではそっと見守っておけ』と、兄貴達がそんな風なことを言っていたからな」
そう言って、からりと爽やかに笑うレザン。その視線が少し優しい気がして、なんだか気恥ずかしくなって目を逸らす。
「・・・ぁ~、うん。レザンの兄君達の言葉なら、なんか凄~く重たい気がする」
彼らは、軍人だ。
そしてわたしは――――「その顔で軍に入るなら、ハニートラップ要員やら諜報員にも行けそうだな」と、ニヤニヤと
別に、軍が綺麗なところだとは思っていないし、汚いところもあると一応知っている。けど、それでも・・・色仕掛けしろと命令や強要されることが、わたしは嫌だ。
しかも、「愛されていない、可哀想な生い立ちの人間の方が
チッ・・・ああ、嫌なこと思い出した。
「どうかしたか? 目が荒んでるぞ、ハウウェル」
「いや、なんでもない」
「……そうか。では、後で乗馬をしに行くぞ!」
「え? まぁ、別にいいけど」
「それでは放課後だな!」
「じゃあ、後でなハウウェル」
✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐~✐
午後の授業が終わって、放課後。
なんだか、馬場に来るのは久々な感じがする。
約一週間振りと言ったところだろうか?
今週はなんだかんだあって、来られなかったからなぁ。そして明日は金曜日。タイミング的に、来られるのは今か明日の早朝くらいになるかな?
取り調べとか取り調べとか、取り調べとか・・・同じ話を延々と繰り返すことだとか。大人達に数時間囲まれることとか。
割と時間が取られたし。
それらが終わって解放された! と思えば、まさかのお祖父様召喚でしたし・・・
驚くやら申し訳ないやらで・・・まぁ、お祖父様に誉められたのは少し嬉しいですけど。明日は、放課後から渋滞覚悟で帰らなきゃいけないんだよねぇ。しかも、多分侯爵家の紋付きの馬車で、だ。お祖父様の
男子寮の雰囲気も変わるし。まぁ、わたし的には今のわいわいがやがやした感じも嫌いじゃないから、悪い変化ではないけどね。
なんかこう、たったの数日で・・・思ったよりも色々とあった。
「ハウウェルはどの馬にするんだ?」
厩舎の中を歩いていて、レザンが聞いた。
「え? ああ、わたしは・・・」
どの子にしようか見渡していると、
「お、ラッキー。いいのが残ってた。コイツ、実は脚速いぞ。乗るか?」
テッドが近くにいた子を勧めてくれた。
脚の速い子は男子生徒に人気があるので、ここではいつも速い子は取り合いになって(ちゃんと乗りこなせるかというのは、全く別の話だけど)いる。なのでわたしは、脚の速さに関係なく、なるべく走りたそうにしている子を選んで乗っている。
よっぽどの暴れ馬か、かなり気難しい子、相当機嫌の悪い子でない限り、大抵の子は乗せてくれると思うし。レザンは暴れ馬や駿馬なんかは余裕で乗りこなせるけど、逆に臆病な子には怖がられて、あまり乗せてもらえないそうだ。ちなみに、テッドの乗馬の腕は普通より上手いくらいなんだとか。選ぶのは、可もなく不可もない子だとか。
と、ふと思い出した。
セディーも乗馬クラブに入っていて、確か……一番大人しくてのんびりした子に乗せてもらっていたって言っていたっけ。どうせなら、その子を探してみようかな?
「ううん。いいよ。わたしはもう少し選んでるから、先行ってていいよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます