いや、おかしくない?


 お祖父様と一緒に入る学校を決め、その学校で習う科目の予習をして、準備を整えた。


 両親? 彼らと話すことなんか特に無いし。


 そんなことより、高位貴族(戸籍的にはまだ子爵令息なんだけど)がみっともない姿を晒すことは恥だからと、家庭教師を付けて数年分予習するのは当たり前のことだそうで……


 わたしは、勉強を頑張りました。


 一応クロシェン家でも勉強していたけど、向こうとは国が違うから、地理や歴史関係は学び直し。


 勿論、剣と馬術は今も続けています。でも、お祖父様のところにポニーはいないから最近は馬に乗っていて。ポニーよりも馬の方が高さがあるから、より落馬に気を付けないといけないんだよねぇ。馬との相性やら馬の気性もあるから、ちょっと難しいし。

 家でも馬に乗って練習したいけど、それは無理だろう。あの親に、自分の馬が欲しいなんて言えるワケがない。


 まぁ、それは置いといて。


 こうして事前予習で捻り出した数年分の余裕を、社交に回して将来の顔繋ぎにするのだとか。学校であくせくと勉学に勤しむのは優雅じゃない、とのこと。


 ちなみに、セディーはもう学校に通っていて、成績は優秀だそうだ。さすがセディー。セディーは読書好きだもんね。


 その間にスピカの誕生日があって、なにを贈ろうか迷いに迷った。


 小さい女の子の好きそうなものを、とても考えた。


 そして、あちこち店を回って、亜麻色のふわふわしたテディベアに一目惚れをした。スピカの髪色をしたくまにリボンを掛けて包装して、クロシェン家まで送ってもらった。


 手紙は、凄く悩んだ。スピカはまだ小さいから、字が読めないかもしれない。だから、簡単なバースデーカードを一緒に入れた。


 一応、代金は父が出してくれた。相変わらず、顔は合わせてないけど。


 クロシェン家へのお礼だそうです。


 まぁ、一応ロイのときにも誕生日プレゼントは贈りましたね。奴には適当に選んだ物を送ったけど。


 それも父が払ってくれた。


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 季節は巡り――――


 お祖父様から教育を受け始めてそろそろ二年。


 入ると決めた学校の入学時期が来た。


 そして、荷物を積み込んだ馬車に乗って――――


 わたしは、全寮制の学園に着いた。


 しかし、そこは騎士学校だった。


 いや、おかしくない?


 お祖父様は、まず総合科に入ってから、その後にわたしの行きたい科目を選択して進んでいいという話だったのに?


 ちなみに、初年度から騎士科へ入学と、総合科から騎士科に上がるの(騎士科から総合科へという逆の場合もある)と、卒業までずっと騎士科生徒でいるのとでは、軍での待遇(軍に入るなら)が異なって来る。

 要は、エリートコースか、文官寄りの軍人か、叩き上げの軍人かという違いだ。

 騎士科から他科に移籍の場合は、軍人寄りの○○という感じになるだろうか?


 入学予定の学園だった場合は、だが。


 ここは、わたしが入学する予定の学園ではないんだけど?


 学園の名前が違っていたので、御者に確認しようと思ったら、既に去った後だった。荷物は辛うじてあるのがまた、なんとも言えない……


 仕方なく学園に事情を話し、祖父へ連絡を頼もうと思ったら――――


 ネイサン・ハウウェルは、ハウウェル家名義で入学手続きがなされているとのこと。


 どういうこと、お祖父様? と、よくよく書類を確認してみたら……


 名義は、ハウウェル子爵家・・・の名義だった。


「……両、親っ……」


 嵌められたっ!? という気分だ。


 しかも……ここは、生徒を外へ出さないことで有名な学校じゃないかっ!?


 お祖父様が真っ先に除外した学校だ。


 軍閥関係者の子息が多く通う、騎士学校とされている。が、それはこの騎士学校の一面だ。もう一つの側面として、なにかやらかしたような貴族子息達を更生させる為に入学させる学校、とでも言えばいいだろうか?

 一応、純粋に騎士になりたくて通う普通の貴族子息もいることはいるんだろうけど。そんな普通・・の貴族子息は極少数。


 間違っても、普通に領地経営やら教養などを学ぶ為、そして交友関係を広げる為に通うところではない。まぁ、軍事的に微妙な立地だったり、国境付近の領地、軍閥と関係を持ちたいような子息はいるだろうけど。


 ちなみに、ハウウェル家は軍閥ではないし、領地が軍事的に微妙な立地でも、国境付近に領地があるワケでもない。軍閥の誰かとよしみを結びたいワケでもないと、思う。多分だけど……


 あ゛あ゛もうっ、なんってことしてくれてんだよあの馬鹿親共がっ!?!?


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